野田正彰氏著の『経営者人間学―リーダーはいかにして創られるか―』という書籍を紹介する。 学生時 | 松陰のブログ

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野田正彰氏著の『経営者人間学―リーダーはいかにして創られるか―』という書籍を紹介する。

学生時代に企業のトップはどういうフィロソフィー(哲学)をもって、経営を行なっているのだろうかと思い、野田正彰氏著の『経営者人間学―リーダーはいかにして創られるか―』という書籍を読みました。『経営者人間学―リーダーはいかにして創られるか―』には、当時に社長や会長であった、ダイエーの中内いさお氏、野村證券の田淵節也氏、花王の丸田芳郎氏、日本電気の関本忠弘氏、住友銀行の磯田一郎氏、ソニーの盛田昭夫氏、セコムの飯田亮氏、鹿島建設の石川六郎氏、旭化成の宮崎輝氏、NTTの真藤恒氏、新日本製鐵の武田豊氏、西武鉄道の堤義明氏、味の素の歌田勝弘氏、三井物産の八尋俊邦氏、日産自動車の石原俊氏へのインタビュー記事が掲載されています。後に倒産したり、逮捕されてしまった方もいますが、錚錚たるメンバーです。当時の日本経済を牽引していた方々でした。どの経営者も豪快で夢を語っています。希望に溢れた時代だったことが分かります。

では、その中で味の素の歌田勝弘氏のインタビューを紹介します。社会体制によく順応し、“慈父”と回想されるような落ち着いた父のもとで、歌田氏は長男として、みんなの愛情を受けて素直ないい子に育ちました。ずっと健康優良児、学良優良児、性格優良児として成長、学校の進学でも挫折体験はありませんでした。味の素そのものは、醗酵法の開発によってイノベーションの力をまざまざと見せつけられ、多角化と国際化の方向に引っ張られていきました。いち早くそれに取り組めたことが、現在の味の素の高収益へ繋がっています。調味料として、中国人の世界に広がったことなど、商品の性格を熟知していたこと、海外で受け入れられる要素が強かったという二面で、比較的幸せな動きができたのでしょう。まず、アミノ酸技術をもとに、医薬品の技術開発へと展開していきました。もう一つは、食の文化への方向。ただし、主食ではなく、嗜好品のレベルから食の多様化へ進みます。基本は家庭の解体と簡素化、そして個食化。成熟社会の家庭がバラバラになっていく中での食に対応してきました。簡単なうまみを作った企業は、簡便化の食の文化によくマッチする性格を持っていました。歌田勝弘氏は嫌なことをことさらさらに深刻に受け止めません。深刻に受け止め、周囲に煽り立てて、危機意識をバネに頑張るタイプの経営者タイプではありません。苦境を転換期における局面と受け止め、次のアイデアを出して、ソフトに潜り抜けていくタイプです。それは歌田勝弘氏のこれまでの生き方そのものです。戦後の受け止め方、会社の入り方、組合での関わり方も、経営者としてもそうです。あまり固く鋭角に受け止めないで、ソフトに受け止めます。その意味では企業社会の健康優良児です。好きな麻雀も、生活が不規則になるときちんと止めます。奥様とデパートやスーパーの散策を楽しんで、現実の世界とほどよい調和を保ちます。うまみを追究してきたこの会社も、時代の変化を素直に受け止めています。脂肪や糖ではなく、アミノ酸に関わってきたが故に、成人病との関わりを強く持つことができました(215頁参照)。

有能な経営者は自分の幸福を他人の幸福と重ね合わせ、周りの人々の幸福を自分の幸福と重ね合わせられることのできる人です。このような現実主義に加えて、何ほどかの自己中心的な理想主義を持たなければ経営者にはなりえません。現状肯定的な現実主義の上に、自らの理想を通そうとする強靭な精神が加味されたところで、経営者は様々な危機の挑戦に耐え、変化をつくり出しながら生きることに喜びを感じうるようになります(256頁参照)。