松陰のブログ

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真野勇著『図説MRI』という書籍を紹介する。

 MRI(磁気共鳴映像法)とはMR現象(核磁気共鳴現象)によって、人体を構成する元素のうちスピンを持つ原子核からの信号で体内を画像化し、それによって診断を行うことです(9頁参照)。

MRIは原子の電磁気学的性質の中の原子核(正電荷をもつ)の自転を利用して画像を作ります。荷電粒子が運動している時には、そこに磁場が形成されます。そのため電子や原子核が、ある軸を中心として自転している時には、それを一つの磁石(つまり磁気双極子)として扱うことができます。これをスピンと呼びます。MR現象におけるスピンとは原子核スピンを指します(123頁参照)。MRIの画像再構成方法に二次元フーリエ変換法というのがあり、二次元の位置情報を得るのに、位相エンコードと呼ばれる技法を使います。まず、Z軸(静磁場)方向のスライス(画像にする部位)を決定します。この際、90°選択励起パルスを用いるため、スライスに含まれるスピンは全てy’軸方向に倒れます。この状態で、x軸方向に線形勾配磁場Gxを掛けてMR信号を検出します。これを周波数エンコードと言います。これで一回目のパルス系列は終わりで、信号でフーリエ変換します。すなわちy軸上からみたx軸上への投影を得ます。二回目以降のパルス系列では、y軸方向に線形勾配磁場Gyを加え、スピンの間に位相のずれを与えてから、その都度、x軸方向への投影をとります。これを位相エンコードと言います。

 今、対象とする面(あるスライス厚をもっている)をコラム(y軸方向に沿った柱)に分割して考えます。一つのコラムに含まれるスピンは、最初、z軸方向の静磁場H0しかない時はz軸方向に揃っていますが、選択励起のための90°パルスを掛けると、スピンは全てy’軸方向に倒れるので、実験室系(一般の静止した座標系のこと)から観察すれば位相がそろって回転していることになります。ここにy軸方向の線形勾配磁場Gyを短時間(tpとする)加えます。この『y軸方向の線形勾配磁場』とは、磁場の強さがy軸方向に異なるという意味なので、一つのコラムの中で、tp時間後Gyを切ると、y軸方向での磁場の強さは均一に戻りますから、各々のスピンの回転速度は同じになり、結局Gyによって生じた位相の差を保持したまま回転することになります。これが『スピンの位相のずれ』です。この状態でx軸方向にGxを掛けてMR信号を検出します。これで二回目のパルス系列が終わりです。三回目の位相のずれは、二回目の位相のずれの整数倍になるようにする場合が多いです。以下、同じようにして位相のずれを増やしながら、三回目以降のパルス系列を行います。これが位相エンコード法です。各パルス系列によって得られるMR信号をx軸方向でフーリエ変換(周波数分析)して投影を得ます。各パルス系列で投影の形が違うのは、位相のずれ方が違うため、各コラムごとのスピンのベクトル的総和が違うからです。パルス系列の回数中の変化はスピンのy座標と関係するので、これをフーリエ変換すれば、y軸方向のスピン分布が分かります。こうして、x軸方向とy軸方向で二度フーリエ変換してMRI画像を再構成するのです(145頁参照)。x軸に周波数エンコード方向を、y軸に位相エンコード方向を取り、それぞれの数値を画像に処理しています。簡単に言えば、スピンしている原子核に磁場を与えて倒し、その戻り方の差異を計測して数値化し、その数値をコンピュータで処理して、その部位の状態を画像にするものです。

平成22年1月9日、NHKのサイエンスアイ『大宇宙に地球外知的生命を探せ』では、惑星の探し方を解説していました。トランジット法を紹介していました。恒星の明るさの変化を測ることによって惑星の存在を知ることができます。恒星を回っている惑星が、恒星と重なった時に恒星の明るさは減ります。明るさの変化に周期性が求められれば恒星の存在が推測できます。差異を求めて存在を知る、この探索方法を観て、私はMRIの画像作成方法を思い出しました。惑星の探索もMRIの画像処理も状態の差異を見つけることです。基準があり、その基準と差異が生じた時、差異が生じたことに何らかの因果関係があり、その因果関係がモノを知ることの源泉になります。エコー(超音波診断装置)も超音波を発生・送信し、体内の対象物から反射した超音波を受信することにより、戻ってくる超音波の差違をコンピューターで画像処理をしたもの。差違によって状態を知るという意味では同じです。

また、その『大宇宙に地球外知的生命を探せ』という番組内ではSETI(地球外知的生命体探査)についても考察していました。地球外知的生命体の存在の可能性について有名なのが、フェミニ・パラドクスです。ニコライ・S・カルダシェフは宇宙に存在しうる技術文明のタイプを、文明の進展度によって三種類に分類する「文明の三段階進化説」を提唱しました。タイプは、惑星規模のエネルギーを利用する文明のことです。タイプは、恒星の力を利用して電磁波の放射(太陽を基準にすれば、およそ4×10の26乗ワット)による通信を行う文明です。タイプは、所属する銀河のエネルギーを利用する文明のことです。多くのSETI論者は、その文明のテクノロジーの発展レベルが長大な時間的な広がりの中に分散しているとすれば、私達よりも随分進んだ文明も多く存在するはずだと予測しています。タイプ、タイプの文明も数多く存在するはずだと。しかし、たったひとつでも進んだ文明があれば、何十億、何兆もの針、すなわち、その無数の情報プロセスによって加工され、あるいは副次的に生まれた送波がSETIのパラメーター空間に大量の点として描かれたものを放出するはずです。フェミニ・パラドクスとは、もしそのような進んだ文明が多数存在するのならば、それに気付かないというのはおかしいことだというものです。加えて、私達の銀河系に知的文明(より正確には、電波を送信する文明)がどれだけあるのかを見積もるものしては、フランク・ドレイクが発表したドレイク方程式があります。ドレイク方程式とは、電波を送信する文明の数=N×fp×ne×fl×fi×fc×fLというものです(『ポスト・ヒューマン誕生』レイ・カーツワイル著 449頁参照)。地球外知的生命体が存在するのかしないのかという問題は別として、人口爆発によって将来、地球以外の惑星に居住することが必要になるかも知れないことを考えると、宇宙の神秘を研究することも大切なのかも知れません。