以前、藤島秀記氏の『基礎から学ぶドラッカー―ドラッカーの足跡と思想―』という講演を聴きに行ったこ | 松陰のブログ

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以前、藤島秀記氏の『基礎から学ぶドラッカー―ドラッカーの足跡と思想―』という講演を聴きに行ったことがあります。「もしドラ」という小説のヒットの影響でしょうか、多くの方が聴講していました。講師の遅刻で25分遅れの開始となりましたが、久しぶりに聞いて良かったと思える講演でした。何よりも配布されたレジメが素晴らしく、講演の内容がきちんと網羅されていました。藤島秀記氏はドラッカー学会の理事をされているそうです。1969年、『断絶の時代』が日米独の三カ国同時出版になり、藤島氏は編集者と著者との関係で交流を持ったそうです。当時は日本未来学会の林雄二郎氏が翻訳していたそうです。その後、新訳版が出版され、現在の書籍は上田惇生氏が翻訳をしています。ドラッカー氏は亡くなってから、さらに人気が出ているようです。ドラッカー氏は48冊の著書があり、1冊の絶版書以外は全て翻訳版を日本で手にすることができます。10人で始めたドラッカー学会も現在は800名の会員を擁する学会となっています。ドラッカー氏の生い立ちは、ナチスドイツとの関係が大きかったようです。1909年にオーストリア=ハンガリー帝国に生まれました。青春時代を第一次世界大戦とナチスドイツとの敵対で過ごし、イギリスの新聞社を経て、アメリカに亡命しました。ドイツで発禁処分を受けた保守的政治学者の書籍を翻訳したそうです。波瀾万丈な人生だったようです。ドラッカー氏は雨の時に入った日本の展覧会で日本の絵画に魅了され、日本人に好意をもったそうです。故にドラッカー氏の書籍には日本人観が出てくるのです。「すでに起こった未来」に収録されている論文に日本人の国民性が述べられているそうです。明治維新や奇跡の成長を成し遂げた日本人の優秀さや1980年から1990年の日本の断絶の時代における日本人の欠点など指摘しています。ドラッカー氏の父親は、大蔵大臣を務めており、イノベーションで有名なシュンペーター氏とも会っていたそうです。ドラッカー氏は創造的破壊などをシュンペーター氏から影響を受けながら、独自のイノベーション理論を確立しました。藤島秀記氏がドラッカー氏の書籍に関して説明してくれました。『経済人の終わり』・『産業人の未来』・『企業とは何か』の三つを初期三部作というそうです。また、『現代の経営』という書籍はマネジメントを学ぶ方の必読書です。その『現代の経営』を発展させたマネジメントの集大成が『マネジメント・課題・責任・実践』という書籍です。藤島秀記氏がドラッカーの中で特に重要な書籍として、『断絶の時代』、『ポスト資本主義社会』、『ネクスト・ソサエティ』の三冊を挙げていました。この三冊は繋がっていて、『ネクスト・ソサエティ』は『ポスト資本主義社会』の基に書かれ、『ポスト資本主義社会』は『断絶の時代』を基に書かれています。故に『断絶の時代』→『ポスト資本主義社会』→『ネクスト・ソサエティ』の順で読むことを勧めていました。ドラッカー氏は時代を越えて読める書籍です。それは、翻訳にも現れていて、前述の林雄二郎氏は国際経済を「世界経済」と訳していたのですが、時代がドラッカーの未来に追いつき、新訳の上田惇生氏はグローバル経済と訳すようになりました。ドラッカー氏を未来を予言した人と言う人もいますが、ドラッカー氏は預言者でもなければ、未来学者でもありません。ドラッカー氏は過去と現在の中に未来はすでに起こっていると言っています。社会、経済の大きなトレンドを予測するには、「洞察力」と「知覚」を磨くことが重要なのです。ドラッカー氏は執筆した書籍の7割が65歳を過ぎて執筆したものらしいのです。藤島秀記氏は言いました。ドラッカー氏は若い頃の書籍も確かに良いが、65歳以降に執筆した書籍の方がしっかりとマネジメント論を描いていると。年齢は関係ないようです。ドラッカー氏の『乱気流の時代』という書籍では、右肩上がりの経済から景気変動を受けるのは資本主義の宿命だと記載しているようです。「もう駄目だと思いながら成長していくようです」。ドラッカー氏には様々な顔があります。それは20面相のようです。学者であり、思想家であり、ジャーナリストでもあります。ドラッカー氏自身は「社会生態学者」と称していました。私が思うに企業は生き物です。生き物である組織を研究する場合、どうしても生態というものを研究しなければならないように思えます。野中郁次郎氏が企業進化論として、企業の進化、生態を述べたように。ドラッカー氏はGEやGMなどの大企業のコンサルタントもしていました。組織改革を中心にアドバイスをしていたそうです。『企業とは何か』という書籍の執筆に当たり、GMのアルフレッド・スローン氏の全面協力の下、GMの調査を行なったようです。それはGMという一企業のみに該当するものではなく、客観的な観点から書かれたひとつの企業のモデルを提示するものでした。大企業は新しい組織に変らざるをなくなるというもの。ドラッカー氏のシボレー事業部の分社化へのアドバイスが気に入らなかったアルフレッド・スローン氏は『企業とは何か』という書籍を一冊も購入しなかったそうです。逆に、この報告をフォードやトヨタ、GEなどの企業は活用していきました。トヨタのかんばん方式もドラッカー氏の影響が大きかったようです。また、イギリスのウインストン・チャーチル氏が、第二次世界大戦中、ノルマンジー上陸作戦に赴く将校達に、この大戦の後に「必ず自由なる社会が到来する」との願いを込めて、ドラッカー氏の『経済人の終わり』を贈ったそうです。また、80年代、イギリスは国力の低下に苦しんでいました。首相に就任したマーガレット・サッチャー氏はドラッカー氏のアドバイスを受け、国有企業の民営化を推し進め、イギリス病で苦しむイギリスを救いました。また、『新しい現実』の第二章において、ソビエト連邦の崩壊を一年前に予測していました。アメリカの高官はドラッカー氏も頭に来たかと嘲笑ったそうですが、ドラッカー氏の「洞察力」と「知覚」が社会主義の崩壊を予測していたのです。ドラッカー氏の講義で重要だったのは、ドラッカー氏は資本主義ではなく、自由市場経済を支持していたこと。モダニズムという近代合理主義の脱却とポスト・モダンの到来を指摘していたことです。ポスト・モダンの考え方は非常に重要です。ドラッカー氏から学ぶキーワードとして、真摯、強みの上に強みを築け、地球的視野で考え、足下から行動せよ、Servant Leadership(リーダーとは、部下の貢献に常に焦点を合わせ、彼らが価値ある貢献ができるようにする人達のことである)を挙げていました。ドラッカー氏と言えば「真摯」です。私も経営、いや人生において大切な心持ちだと思います。私も何事においても真摯に対応していきたいと常に思っています。久しぶりに充実した講演でした。逸話もたくさん聞けて非常に面白かったです。