川添象郎オフィシャルブログ -131ページ目

プロデューサーの仕事とは?(2/3)  ~アイデアは瞬間的に生まれる~

象「空間プロデュースをやってた時が一番典型なんだよ。

空間プロデュースはその仕事を発注してくるクライアントの話を聞いてるうちに、作るもののイメージが瞬間的に出来上がっちゃうんだ。

空間プロデュースは音楽プロデュースとは全然違う分野のスペシャリストとの仕事になるのはわかるでしょ?

建築やインテリア、照明、音響などのスペシャリストとの仕事になるんだよ。」


K「それはそうですよね。

でもアイデアが瞬間的に出来上がっちゃう、っていうのはどういうことなんでしょう?」


象「それはきっと世界中を旅して好奇心の赴くままにいろいろな美しいものを見たり、それを作り出した人達に会ったり、

またある時は偶然に出会えちゃったりwwした事が肥やしになってると思うよ。」


K アイデアは移動距離に比例する、って言いますもんね。」


象「ふ~ん、そうなんだ。

そういえば僕の人生はずっと旅してきたようなもんだからなぁ。


あとプロデュースしていくプロセスって合議制じゃないんだよ、民主主義じゃないわけ。
スペシャリストの意見は欲しいんだけど、最終決定権はプロデューサーにあるべきなんだ。例えばKENちゃんに曲を発注するとするよね?
ここの部分はいいけど、ここから2サ ビつけた方がいいよ、とか。その理由はもちろんはっきり言うよ。
でもその時にさ、これは僕の音楽だから、僕の音楽的美学で作ったものだからそういうのはやりたくない、と言ったら、じゃあ君いらないってなる。
ていうかそういうのはナシ、っていう風に最初からやってるわけ。
それは世界的な大作曲家だろうが、プ レイヤーだろうが誰にでも同じだよ。」

K
「なるほど。じゃあダメ出しを受けた時点で、これが僕の持ち味なんです、とかこれが 今イケてるんです、とか言っても意味がない、ということですね。

その曲の事だけでなく、全体を考えた上で持って行くべき方向がある、と。
例えばタイアップとか、その曲が流通すると ころまでヴィジョンがあるということですね。」

象「そうだね。

あと僕は流行に興味ないし、それに少なく とも僕が起用する人材の持ち味だったり、っていう情報は把握してるつもりだからね。闇雲に発注するわけじゃないしね。
あとね、さらに付け加えるとタイアップなんていうものも僕が考えたんだ。」

K
「あの、、、どういうことでしょう?」

象「日本で初めてのドラマとのタイアップっていうのは、僕がやったんだよ。」

K
「ホントですか!誰の曲ですか?」

象「ユーミンのあの日に帰りたい。

僕が考えたのはね、要 はテレビのゴールデンタイムでその曲がかかって、クレジットが入ればいいんだからさ、視聴率の高いドラマ班のスタッフに話を持ちかけたんだよ。
当時ドラマの主題歌ってそのドラマの予算内で制作してたんだけど、画の方に予算を採られるからさ、
主題歌の予算ってすごく低くて、いくらだったかな、確か20万とかで。
だから僕はドラマ班に、ここに1曲200万で 制作した楽曲がある、これをタダで使わせてあげる、ありがたく思えww
その代わりドラマの始めと終わりに必ずかけてクレジット入れ てね、って言ったら、それが通っちゃった。
それがブレイクしたからそれより前の”ひこうき雲”から何から全部売れちゃったんだ よ。」

K
「その発想は本当にすごいですね。

でも例えばアメリカの音楽業界にはすでにそういうシステムがあった、とかそういうのを知ってたんですか?」

象「全然関係ないよ。

ウチのスタジオでマルチトラックレコーディングしたイイ音でゴールデンタイムに流せれば、それで良かったんだよ。
当時 の歌番組はマルチトラックじゃなかったし、アーティストをテレビにむやみに露出させるべきではないと思っていたしね。
テレビというのはラジオと違って難しいメディアだからね。」

K
「なるほど。

要するに他のレコード会社が歌番組に自社のアーティストを営業するという考えしかなかったところを象郎さんはそこを水平思考でずらしてドラマ番組に営業した、というアイデアですね。」

象「それでさらに水平思考して、CMの 方がもっといいや、と思ったの。

ドラマは週一回だけど、CMはバンバン打ち込まれるからね。

欠点は30秒しかないってことだけど。テレビのCMとのタイアップも僕が初めてやったんだよ。」

K
「それも象郎さんですか、、、。」

象「もうね、声を大にして言うわwwタイアップっていう手法は僕が最初にやった!

要するにアイデアっていうのはコロンブスの卵だな。」

K
「そうですね。」

象「ゆで卵なんだからさ、ガチャってやれば立つんだよ。だけど、それを見た人たちは、なぁ~んだ、ってなる。

だけどね、その人たちはそれが思いつかなかった人たちなんだよ。」

K
「みんながルールだと思い込んでるものが、実はルールじゃなかったという。」

象「そう、固定観念にとらわれているんだよね。」


K 「ローマ人の物語、っていう塩野七生さんの本の中で、あたりまえの事に気づくのが天才だ、とありましたね。」

象「そう。何にもないところからとんでもないものを見つけてくるんじゃなくて、普段の生活の中で誰にも見えてない、でも誰にも見えてるものをフッと持って来てやる、っていう。」



(3/3に続く)