こわい、こわい話(18)中国軍機の「レーダー照射」 | 詩はどこにあるか

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 事実関係が、私には、依然としてわからない。
①軍事訓練の通告の有無
 小泉は、「自衛隊機がレーダー照射を受けた」と発表した。「中国からの軍事訓練をするという通告はなかった」と述べた。その後、中国が中国艦船と自衛隊の艦船の交信記録を公表すると「交信はあった」と訂正した。
 このことに対して、外務省は12日か13日になって(Facebookの外務省のページを見ると、14日段階で2日前になっている)、具体的な通告はなかった旨、書いてある。
 情報通によると、「軍事訓練をするときの、『通告窓口』は外務省であるという。私は小泉の「会見」を見ていないのだが、もし、そういうルールがあるのなら、小泉は「正式ルートの外務省への通告はなかった。現場海域での艦船間の交信はあった」と言うべきではなかったのか。なぜ、「正確に」情報を発信しないのか。
 中国がどう言っているかわからないが、外務省が公表しているのだから、これは中国がルール違反をしたことになる。私は、日本政府の「発表」を信じる。信じた上で、発表されたことに対して疑問を書く。
 今回の疑問のひとつが、小泉の発進する情報の不確かさである。「事実」が何かわからない。
 「通告(交信)」に関して言えば、中国は外務省には通告しなかった。しかし、現場で自衛隊艦船に対しては通告した。
②レーダー照射の実態
 これは、依然としてわからない。逃走する自衛隊機を中国軍機が追跡しながらレーダー照射をしたのか。それとも自衛隊機が訓練の妨害をしていると感じて、中国軍機が照射したのか。31分という、長い時間なので、実態をぜひ知りたいと思う。
 このことに関して、Facebookで王士銘が興味深い情報を公表している。
 「中国軍事MEDIAによると、今回の日本のF15がロックオンされた件は、中国軍機によるものではなかったという。F15は離陸した直後、まだ海岸線を出る前の段階で、南昌艦(055型)の84発の紅旗9-B(can fire)と、西寧艦の46発の紅旗9-B(can fire)にすでに捕捉されていたとされる。」

 


 以下は、「事実」がわからないので、私の「仮定」である。「批評」である。
 これが正しいとすると、自衛隊機は、中国が軍事訓練をしている海域、空域を確認できるところまで近づき、そこから去るまで(あるいは、そこを去って基地に帰還するまで)レーダー照射されたことになる。
 私は戦闘機同士の「逃走/追跡」を想像していたので、びっくりした。なぜ、小泉は、中国の艦船からと言わなかったのか。(憶測だが、自衛隊機にレーダー照射と聞けば、多くの日本人は、「中国軍機から照射された」と想像すると思い、「情報を隠したまま」発表したのではないのか。だから、実際、中国軍は、執拗で怖い、レーダー照射されたパイロットの恐怖を想像できるのか、というような感想がインターネットで飛び交った。)
 小泉、あるいは外務省が「事実」を公表したかどうか、私は、確認できていない。
 で、もし、王士銘の「情報」が正しいと仮定してのことなのだが、それが正しいのなら、日本の「防衛」には不安がつきまとう。自衛隊機が発進してすぐに撃墜される可能性があるのである。31分、まったくレーダー照射から逃れられない。自衛隊のパイロットは、そういう「技能」なのである。(王士銘のページには、その他の、もっと詳しい情報が書かれているが、ここでは紹介しない。)
 こんなことは、「常識」なのかもしれないが、それでも、それが公表されれば、日本を攻撃しようとしている国にとっては「力強い」情報になるだろう。31分間もレーダー照射を受けたというような「事実」は、ほんとうは「秘密」にしておかなければならない、日本の「防衛力の欠点」だったのではないか。なぜ、それを小泉は、公表したのか。
 一方、中国は、なぜ、それを公表したのか。簡単である。中国の軍事力を明らかにするためである。日本が「台湾有事」を「日本の存立の危機」としてとらえ、中国に対して戦争を仕掛けてきても、日本はすぐに全滅する、と知らせるためである。
 これは、こわい通知であるといえば、こわい通知(脅迫)かもしれない。しかし、「台湾有事」に「存立の危機」名目で日本の自衛隊が出動しないかぎりは、日本は攻撃されないだろう。中国には、日本を攻撃する理由がない。
 インターネットには、東シナ海海域で米軍が中国軍と戦争したとき、どうなるかというシュミレーションをしたところ、米軍のシュミレーションでは、なんどやってみても米軍が負ける結果になったという。米軍でそうなのだから、自衛隊は、シュミレーションをしてみなくてもわかるだろう。

 ここで、この「レーダー照射」問題は、結局、高市の「存立の危機」発言に戻る。高市が中国に「宣戦布告(予告)」さえしなかったら、レーダー照射も起きなかった。ほんとうに「宣戦布告」したら、日本の自衛隊はあっという間に全滅ですよ、と中国は「予告」したのである。
 そうならないために、「先制攻撃」すればいい、と高市支持派は言うかもしれないが、日本からの一回の先制攻撃に、中国が一回だけ反撃してくると考えてそういっているのだとしたら、これはあまりにも軽率。一回の先制攻撃に百回の反撃があったときはどうなるのか。日本は全滅だろう。
 戦争は、一度起きてしまえば、もうおしまいなのだ。そうならないようにするために、何をすべきなのか。高市は、それを知らない。



 高市発言(台湾有事)関してだが、Facebookで対話したひとりが「同盟国である台湾が中国から武力攻撃されたら、みんなで助けなければならない」と書いていた。私が「台湾は日本の同盟国ですか? どんな条約を結んでいますか? みんなとはだれですか?」と質問したら、「条約などは知らない。テレビを見ている一般の日本人の考えていることだ」という答えが返ってきた。
 何回か、「集団的自衛権」を、日本だけではなく、近隣の諸国と協力し(集団で)、日本を防衛することと、多くの高市支持派が考えていることを書いたが、彼の場合は、「台湾が中国から武力攻撃されたら、日本だけではなく、近隣の諸国と協力し(集団で)、台湾を防衛する」必要があると考えているのだろう。台湾が中国の一部であること(日本政府がそう認めていること)も認識していなければ、「集団的自衛権」のことも正確に認識していない。だから、高市の発言のどこが問題かも理解していない。
 彼はまた、日本がウクライナみたいになったらどうするのか、と心配していたが、彼にとっては日本がウクライナ、中国がロシアということなのかもしれないが、歴史は、それと逆のことを教えてくれる。
 日本がかつて台湾を支配し、中国のなかに「満州」をつくり、中国を侵略した、朝鮮半島を侵略した、フィリピンを侵略した、ほかの国々も侵略した。日本は、ロシアがウクライナに侵略したように(それ以上に)、アジア諸国を侵略し、多くのひとを殺した。日本軍によって肉親を殺されたひとびとが、日本に協力するだろうか。高市支持派は、そのことを真剣に考えてみる必要がある。

 「戦争責任」ということばがある。私は私に、第二次大戦の「戦争責任」があるとは思わないし、若い世代にも「戦争責任」があるとは言わない。だから、中国の知人にも、韓国の知人にも、台湾の知人にも、他のアジアの知人にも「謝罪」したことはない。しかし、日本が多くの国を侵略した、そして人々を殺したという事実は歴史として忘れたことはない。