小倉金栄堂の迷子20250718 | 詩はどこにあるか

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小倉金栄堂の迷子20250718

 ことばは石のように座って、遠くにある屋根を見ていた。石がことばだったかもしれない。ことばと石が並んでいたのかもしれない。秋だった。道が白く乾いていた。道には、年をとったことばがいた。それが見えた。しかし、年をとったことばからは、山の上のことばと石は見えない、ということを、ことばと石は知っていた。小さいからだ。しかし、それは間違いだった。それは、年をとったことばがまだ幼かったころ、山に登ったことを忘れないために置いたものだった。雨が降った。日が照った。冬には雪が降った。風は、いつも鳥よりも高いところを吹いていた。ことばと石の体の奥に小さく動くものがあったが、ことばと石は動かずに、昔からそこにあったかのように、じっとしていた。ことばと石は、いつの日か、年をとったことばが石の方を見ることがあると知っていたのか、鳥のようにどこかへ行ってしまおうとは考えなかった。それが、いま、何を間違えたのだろう突然、宙に浮かんで滑るように動いていく。年をとったことばが、宙に浮かんで漂っているその方向へ。