破棄された詩のための注釈13 | 詩はどこにあるか

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破棄された詩のための注釈13
                         谷内修三2020年08月25日

 いかがわしい俗語を発した瞬間、顔つきが変わった。美しくなった。自覚しているのか、振り返りぎわに視線を流してきた。真昼の光よりも強いものがあった。
 そうなのか。そうかもしれない。

 美は、唐突に現れる抽象ではない。具体に潜む瞬間的な絶対である。ことばにすることは不可能である。

 そうなのか。そうではないかもしれない。

 耳の奥に、遠い山の中を流れる川の音がした。裸で泳いだ、あの夏。巨大な石の上に座って、私は何を振り返ったのだったか。