嵯峨信之『詩集未収録詩篇』を読む(76) | 詩はどこにあるか

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* (水よ)

空へとどこうとして
急に無一文になつて地獄へ落下する水よ

 「無一文」と「地獄」が唐突に出てくる。
 「水」が比喩なのか、「無一文/地獄」が比喩なのか。
 「地上」と言わず「地獄」と言うところに、これを書いたときの嵯峨の壮絶さがあらわれている。
 「急に」ということばこそ書きたかったのかもしれない。「急に」だけは比喩ではなく、実感そのものだ。

 たぶん「思想(肉体)」は特別なことば(意図して書かれた比喩)に表れるのではなく、だれもがつかうことばに無意識にあらわれるものなのだ。





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詩集『誤読』は、嵯峨信之の詩集『時刻表』を批評するという形式で書いたものです。
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