自民党憲法改正草案を読む/番外346(情報の読み方)
2020年05月03日の読売新聞(西部版・14版)の1面の見出しを読み、私は混乱した。何が書いてあるか、即座に理解できなかった。いや、内容は理解できたが、どうしてそういうことが起きるのかが理解できなかったと言い直さなければならない。
社会活動再開 容認へ/特別警戒都道府県除き/少人数イベントなど/政府原案
6日で期限が来る「非常事態宣言」を「1か月程度延長する」というのが、きのうまでの方針であった。コロナ対策は「長丁場」になる、ということだった。
「1か月延長するけれど、特別警戒都道府県は制限をゆるやかにする」というのは、おかしくないだろうか。いまでも、営業しているパチンコ店へ県境を超えて客が押し寄せ、問題になっている。「特別警戒都道府県」に住むパチンコ好きはみんな他県へパチンコをしに行くだろう。ほかの「社会活動」も同じだ。
また、1面には、
コロナ 国内死者500人超
とある。26面には、「東京 新たに160人感染」という記事と「ピークの4割減/1週間の都内感染」という記事が載っている。
コロナ感染者、死者の推移はどうなっているのか。減っているのか。増えているか。判断しにくい。だからこそ、警戒するために、非常事態を「1か月延長」するのだと思っていたら、そうではない。東京でも「1週間単位」でみれば感染者は減っている。だから、規制緩和を、まず感染者の多くないところでやってみる、ということか。
まるで、「実験」である。
で、何のための実験? 人間のいのちがかかっているに、なぜ、そんな無謀な実験をする?
1面の、つぎの見出しを手がかりになる。
憲法改正 賛成49%/「緊急事態」関心高まる/本社世論調査
私は、こう考える。以下のように、一連の流れを詠む。
安倍は、コロナ対策を「憲法改正」に利用したいのだ。しかも、その「利用」は、「社会活動再開 容認」が成功しても、失敗しても、安倍にとっては好都合なのだ。
①成功すれば……。「非常事態宣言を1か月延期」しながら、規制緩和もすすめる。感染者が確実に減り続け、特定警戒都道府県の規制も解除できるようになれば。すぐに国会を解散し、総選挙だ。2020年07月05日の都知事選に合わせるのだろう。そのときの宣伝文句は「安倍のコロナ対策は大成功」ということになる。マスクや10万円給付など、批判もあったが、コロナを封じ込めることができた。まだ安倍を批判し続けるのか、安倍のもとで日本経済を再建するのか、その判断を国民に問う、と安倍は主張するだろう。
②失敗すれば。イベントなどを開催した県が悪いのだ。「非常事態宣言」が延長されているのに、あちこち移動した国民が悪いのだ。指揮を、都道府県に任せるのではなく、安倍が管理する必要がある。指揮権を安倍に集約する必要がある。憲法を改正して「非常事態事項」を盛り込まなければ、コロナは終息しない。憲法改正、非常事態事項を盛り込むことに賛成か、反対か、その判断を国民に仰ぐ。安倍は、そう主張するだろう。
失敗するにしろ、成功するにしろ、安倍は、それを利用できるのである。そして、どちらかというと②の失敗の方に重心をおいている。①の成功では、安倍の政策が支持されたとはいえても、それがそのまま憲法改正(緊急事態事項の盛り込み)には直結しにくいからである。これは、いいなおせば、国民のいのちを利用して、自分のやりたいことをやるということなのである。安倍は国民のいのちなど、なんとも思っていない。すでに「独裁者」なのだ。
3面には、
緊急事態 コロナで焦点
という見出しがある。
そのなかに、こんな記事がある。
(自民党憲法改正)推進本部幹部は「現行憲法でも対応できるが、憲法に私権制限を含めた緊急事態条項を明記すれば、法律をより迅速に運用できるようになる(略)」と語る。
目的は「私権制限」である。パチンコ店の開業は制限できるし、パチンコをしに外出することも制限できる。「要請」ではなく、はっきり「制限」できる。そして「私権」はパチンコをすることだけではない。デモもだめ。こうやって安倍批判を書くこともだめ、ということになる。
戦争中だって、「戦争反対、侵略戦争をやめろ」と政府に訴える権利は国民にある。しかし、そういう権利はすべて封じこめられる。そういう時代がくるのだ。日本国民が全員「御霊」になるまで(死亡するまで)、安倍の独裁はつづくだろう。
しかし、あまりにもむちゃくちゃすぎる。
いまは、コロナの感染をいかに終息させ、死者を少なくするか、を考えるときだろう。そのほかのことは、そのあとに考えればいい。
安倍は、安倍の求めていることに対しては「先手先手」を繰り出すが、国民が求めていることについては「後手後手」どころか、何もしない。放置を決め込んでいる。
外れることを願いながら、予測しておく。
衆院選は、都知事選と同日に行われる。すでに安倍は役員会で「議員は地元に帰って運動しろ」というよう支持を出している(04月12日)。議員はコロナ対策のチラシを名目に、しっかり名前を売り込んでいる。そして読売新聞は「衆院選 注目の選挙区」という連載をはじめている。もう、選挙は水面下で始まっている。