すとうやすお「ひるげのあと」はひらがなで書かれた詩。
すりへったたたみのうえに
たおれて
あおむけになる
どこまでも どこまでも
せなかはのびて
ちきゅうをひとまわりする
てんじょうのふしあなが
ぼくをにらむ
にらみかえすと
めだまはやねを わたぐもを
つきぬけて
そらのただなかをはしる はしる
一連目が楽しい。
「ちきゅうをひとまわりする」がとても自然に響いてくる。たぶん「どこまでも どこまでも」が「せなかがのびて」よりも先に書かれているからだ。「どこまでも どこまでも」には「動詞」がない。果てしない感じだけがある。まず「果てしない感じ」があって、そのあとで「せなかはのびて」と主語と動詞がやってきた。そして「ちきゅうをひとまわりする」とつながっていく。「ちきゅうをひとまわりする」は「どこまでも どこまでも」の言いなおしなのだ。
二連目の「はしる はしる」の繰り返しも力強くて気持ちがいい。
「ながぐつ」もいい。
ぬかるみにはまって
どろまみれ
そこいらのこっぱで
つちくれをけずる
すいどうすいをながして
たわしでこする
くろいはだがみえてくる
ぞうきんでふくと
つやつやひかる
なやのすみに
そろえておく
すると ひとりであるきだす
長靴をきれいにする「手順」がそのまま描かれている。手抜きがない。だから「つやつやひかる」。途中で手を抜くと、こんな具合にはならない。「手を抜かない」ということが、大切にしているものと「一体」になるということなのだろう。「ひとりであるきだす」の「ひとりで」が楽しい。長靴が喜んでいる。
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