自民党憲法改正草案を読む/番外272(情報の読み方)
2019年06月03日の読売新聞(西部版・14版)に興味深い記事が載っていた。愛知県で植樹祭が開かれた。そのときの天皇のことばに注目している。
2社会面に、こういう見出し。
陛下「皆さんとご一緒に」/植樹祭 敬語で呼びかけ
記事中には、こう書いてある。
お言葉の冒頭、陛下は「皆さんとご一緒に植樹を行うことを慶ばしく思います」とあいさつされた。
このことに関し、瀬畑源・成城大非常勤講師がコメントを寄せている。
「天皇陛下が『皆さんとご一緒に』と国民に敬語をつかわれたことに驚いた。陛下はこうしたていねいな表現を皇太子時代から使われているが、天皇の言葉としては過去にはなかったのではない。陛下は、国民の中に分け入るという考えを示されており、今回のお言葉も国民目線に立つという意識の強さを感じさせた」
平成の天皇が築き上げた行動としての「象徴」を継承し、さらに発展させる姿勢が感じられるということだろう。
ここで思い出すことがふたつある。この文章を読んでいる人に考えてもらいたいことがふたつある。
平成の天皇が2016年のビデオメッセージのことば、いまの天皇が即位したときのことばを思い出してもらいたい。
読売新聞も、瀬畑も今回の天皇の発言に驚いているが、驚くなら、平成の天皇のビデオメッセージのことばにこそ、もっと驚くべきである。
そのなかで、天皇は
既に八〇を越え、幸いに健康であるとは申せ、次第に進む身体の衰えを考慮する時、
と「申す」ということばを使っている。
私は「敬意表現」にうとい人間だが、この「申す」にはびっくりしてしまった。天皇がだれに対して「申す」と言っているのか。
これは「敬意表現」ではなんと定義するのだろうか。
私の感覚では、「目下」のものが「目上」の相手に対してはつかうが、「目上」のものが「目下」の相手に対しては、よほどのことがないかぎり使わないのではないか。
天皇は、解釈の仕方はいろいろあるだろうが、日本ではいちばん「目上」のひと、それより上のひとはいないと考えられている人間だろう。こういう人間が「申す」ということばをつかったことに、私は驚いた。
単に
既に八〇を越え、幸いに健康であるとは言え
となぜ言わなかったのか。
天皇のことばとして過去にこういう表現があったかどうか、瀬畑は詳しいようだから、聞けるならぜひ聞いてみたいとも思う。
さらに、そのビデオメッセージでは、「考えられます」「思われます」「懸念されます」という「婉曲的」な表現が出てくる。「思います」「懸念します」で充分意味が通じるの、あえてつかいわけている。
このことばの「乱れ」に、私は安倍との「交渉」(安倍からの「圧力」)があったと考えている。
さらに、平成の天皇が退位する時の安倍のことば、新しい天皇が即位するときの天皇のことば、安倍のことばのなかの、「象徴」を定義する部分には、現行憲法のことばではなく、2012年の自民党改憲草案のなかにある、
日本国及び日本国民統合の象徴
ということばがつかわれている。わずか二日間で三回も繰り返しつかわれている。私はここにも安倍の「圧力」を感じている。日本国憲法では
日本国の象徴であり日本国民統合の象徴
という表現である。
今回の植樹祭での天皇のことばが、「ご一緒に」と「ご」がついているだけで大騒ぎするなら、私が指摘している部分はもっともっと大騒ぎしていいはずである。
安倍の「天皇の政治利用」は加速している。天皇のことばから、もう一度、それを見つめなおすべきだと思う。安倍批判を「ビデオメッセージ」のことばから、もう一度やり直すべきだと思う。
今回の天皇の「敬語表現」は、そのきっかけになる。
新天皇の「象徴としての務め」と安倍の「政治利用できる天皇(天皇の政治利用)」の「戦い」がはじまったのだと思う。
(ビデオメッセージのことばを中心に、平成の天皇と安倍との「交渉」を「天皇の悲鳴」という本にまとめています。ブログで書いたことを整理したものです。ぜひ、ご一読ください。一般書店では販売していません。オンデマンド出版です。下記のURL をクリックして、注文してください。https://www.seichoku.com/user _data/booksale.php?id=168072977)
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