11 土曜の夜、日曜の朝--汗について思う
やわらかな夜の鏡は枯れた
闇をくすぐる微熱は落ちてゆき
死んだ魚のようにあぶなく光るものがある
「石を投げられたのか
一散に逃げていく蛇の夢を見た
ちぢみつづける海だとか
黄色い縁取りの鳥だとか、も」
砂の、風紋であるか
何かしら流れようとする意志のように
粗いものが発光する時間である
せきとめられた気配がたまってくるのである
「汗の働きは体温の調整にある
夢の働きは精神の調節にある」
冷房のかびくさい匂いに酔ったのか
薄荷のうすみどりにむかって
ひりつくものがある
シーツの淵から垂直に手をおとし
私は私の位置をととのえる
汗が流れるようにと
(アルメ234 、1985年06月25日)