7 空を見る男 | 詩はどこにあるか

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7 空を見る男



角を曲がろうとして体が傾く
ビルがなくなっているからである
新しい土の色の上まで空が降りてきて
視線をひっぱるからである
何度も経験していることである
だが慣れることはできないのである
「消えることによって存在を
知らせるものがある」
「消えることによって向こう側を
みせるものもある」
人事のようにふいに動いていくものがある
我われはビルの裸に視線でふれる
隠されていたものは無防備であり
無防備なものは我われを恥ずかしくさせる
春風がのぼっていく非常階段のとなりの
小さな窓から男が水色が散乱する空をみているのである
空にすいこまれまいと直立しているのである
「まっすぐに進みすぎるものは暗い
ものを含んでいる」













(アルメ232 、1985年03月25日)