日原正彦「よこがお」「せいぞんの」 | 詩はどこにあるか

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日原正彦「よこがお」「せいぞんの」(「橄欖」112、2019年01月25日発行)

 日原正彦「よこがお」の一連目。


少ない音符の 散らばった
さびしいメロディーのような
君の 横顔の ラインを
ぼくの 貧しい無言で なぞってゆく


 分かち書き(1字空き)のリズムが非常に気持ちが悪い。特に「君の 横顔の ラインを」がむりやりことばを立ち上がらせようとしている感じがして、ぞっとする。「貧しい無言」はいかにも日原らしいことばだが、それを分かち書きで「わざと」目立たせているのも、いやあな感じがする。
 で、とってもいやな詩なのだけれど。


でも この無言が
どんな無言か 未だ ぼくにはわからない
偽善か偽悪か
イロニーかフモールか
殺すのか 生かすのか
生まれようとしているのか
とっくに死んだのか


 この部分が、ちょっとおもしろい。私の知っている日原とは違う。でも、知っているといっても、四十年以上も昔のことなので、いまは、このスタイルが日原なのかもしれないけれど。
 ちょっとおもしろいと思ったのは「ぼくにはわからない」。
 昔の日原は「ぼくにはわからない」などとは言わなかっただろうなあ。なんでも「わかっている」。抒情の論理にしてしまう。あるいは論理の抒情にしてしまう、と言った方が正確か。


ぼくの無言を 躊躇わせるような
そんな横顔を 無意識に君が選んだこと
いや 選ばせたものが
風のように ぼくのかわいた唇をさわってゆく


 「いや」からの展開が日原節である。

 「せいぞんの」は、池井昌樹の「きのこ」に寄せて書かれたもの。


「あめにぬれてる きのこたち
おおきい きのこ
ちいさい きのこ」
きのこきのこは きのうのこ
きょうのこ そして あしたのこ
こは おとこのこ おんなのこ


 この部分のリズムが楽しかった。






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