池澤夏樹のカヴァフィス(71) | 詩はどこにあるか

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71 一九〇三年の日々


二度とみつからなかった--あまりに早くなくしてしまった……


 と始まる。二連目は、


二度とみつからなかった--わたしにとってはまったくの幸運、
だからあっさり手離してしまった。
後になってからまた求めて苦しんだ。
詩的な眼、色の白い顔、
そしてあの手も二度とはみつからなかった。


 「二度とみつからなかった」「二度とはみつからなかった」と繰り返される。繰り返し思い出す、思い出さずにはいられないということだ。

 池澤の註釈。


「……年の日々」という題の詩をカヴァフィスは(略)全部で五篇書いている。その他にも年号を冠した題は多く、架空の古代人に名前を付すのと同じように、歴史的記述の形態を借りる手法と見られなくもない。


 他人にとってはどうであれ、カヴァフィスにとっては「歴史」、つまり変更の許されない「事実」を書いたということだろう。書くことによって事実は真実になる。









 


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