どう語っていいかわからないくらいひどい映画である。映画がはじまる前に、奇妙な解説が付く。もう、それだけで映画がわかってしまう。「結末をけっして語ってはならない」という忠告もついている。結末って、何? あまりのばかばかしさに、結末なんて語りたくなるはずがない。映画館を出るなり、観客が次々に「ひどい映画」と言っている。それがこの映画のほんとうの結末である。
映像が、とてつもない手抜き。船で島へ行くシーン。いまどき、背景に映像を映して、その前で船のセットで映画を撮るのか? 遠くの雲がまったく動いていないぞ。セットで撮影するにしろ、ちゃんと背景の映像ぐらい撮って来い。
だいたい船のシーンで、登場人物がふたりって、いくらなんでもないんじゃない?
同じように、ディカプリオをのせて車が森の中を走るシーン。背景は映像。その前で車の「上半身」(タイヤは映さない)だけ、運転手とディカプリオだけの映像。処理がずさん。合成がひとめでわかる。私は眼を手術して、視力がとても悪いのだが、それでもわかるずさんさ。
そして、ディカプリオが断崖から上がってくるときの岩の質感のなさ。まるで発泡スチロールの岩である。軽い。色がとても軽い。
いったい、どこに金をかけたのかわからないが、こんなずさんな映像の映画はひさびさに見た。ディカプリオはスコセッシと組んでから、まったくさえない俳優になってしまった。
精神病院を描いた映画では、ジェシカ・ラング主演の「女優フランシス」の方がはるかにこわい。強制的な入院と、ロボトミー手術までの過程は、いま思い出してもこわい。ジェシカ・ラングはこれとは別の映画『ブルー・スカイ』でアカデミー賞(主演女優賞)を取ったのだか、私はいつもジェシカ・ラング+アカデミー賞で「女優フランシス」を思い出してしまう。
ついでにジェシカ・ラングの宣伝をしてしまうと、『郵便配達は二度ベルを鳴らす』『トッツィー』を見ようね。
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