「L. A. コンフィデンシャル」を書いたジェームズ・エルロイの脚本である。込み入ったストーリーの見応えのある映画を期待したが、まったく期待外れである。警官の腐敗ぶり(?)にまったく新味がない。見え透いた腐敗の構図、いやもう何度も何度も映画になった腐敗の構図である。だれが悪役なのか、すぐにわかる。映画はストーリーで見るものではないけれど、ここまであからさまな「どんでん返し」が用意されていると、ばかばかしくなってしまう。
腐敗の構図に気が付かないのは主人公のキアヌ・リーブスただひとりである。
むりをして(?)1点だけ、おもしろいシーンをあげておく。
キアヌ・リーブスが追いつめられ、つかまえられ、丘の上のアジトへ連れて行かれる。気が付いたら手足はしばられている。そのキアヌが銃をもった2人の警官から、這って逃げようとする。
え? 無意味な行動じゃない? 2人の警官も笑っている。からかって、わざと狙いを外して銃を撃つ。「あ、足に命中した」などと笑いながら。キアヌはけがをしたまま、草の影に逃れる。それを1人の警官が追って来る。そして、とどめの1発を撃とうとしたとき、キアヌが反撃する。スコップで。キアヌが逃げていった先は、実は、キアヌたちが遺体を発見した墓だった。墓を掘り起こしたときのスコップがそこにあることを知っていて、キアヌはそこへ逃げたのだ。
ここは見事でしたねえ。伏線の張り方が美しかったなあ。私は寸前まで、気が付かなかった。あ、スコップと思ったら、キアヌがスコップを持っていた。少なくとも「自分から墓場へ突き進んでいる」という警官のせりふで気が付くべきだったなあ。--でも、この映画、あまりに退屈なので、このあたりまでくるとほとんど睡魔との闘いという感じだから……と、自分のぼんやりさ加減を弁護したいような気持ちにもなったり……。
あ、ともかく、みえすいたストーリーです。そして、それを、あいかわらず無表情ハンサムのキアヌが演じるのだから、これはほんとうにつらい映画です。
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