photo 四元康祐 poem 高階杞一「夜のミュンヘン」 | 詩はどこにあるか

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photo 四元康祐 poem 高階杞一「夜のミュンヘン」(「ビーグル」2、2009年01月20日発行)

 連載「フォトポエム」(2)。photo 四元康祐 opoem 高階杞一「夜のミュンヘン」。私は2行目を誤読した。

外は雨が降っている
雨が耳の中で降っている

 これを

外は雨が降っている
耳が雨の中で降っている

 と読んでしまった。そして、不思議なことに、私は高階杞一のことばを読みながら、頭の中でまったく別のことばが動いているのを感じた。感想になるのかどうかわからないが、そのとき頭の中で動いたことばを感想のかわりに記しておく。

外は雨が降っている
耳が雨の中で降っている
一つ二つ三つ 数を数えながら
つめたい声が追いかけていく 足は
一つ二つ三つ 数を数えながら
耳の階段を踏み潰していくのだが
踏み潰されるものだって負けてはいない
靴をぬらし靴下をぬらし足指の間をぬらし
ぬらぬらぬらぬらし のぼってくる
「かわいそうなわたしのぺにす」
とあなたは言った
繊細な指となってさらに
のぼってのぼって
首筋をひっかく
耳たぶを噛む あ、あ、あ
温かい唾液がきらりきらりきらきら
内耳の壁をつたってくる
雨が降っている
夜が降りつづいている