堀江敏幸『河岸忘日抄』(3) | 詩はどこにあるか

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 「並列の夢」ということばが72ページに出てくる。電池の「並列」である。直列だと電力が大きくなり電球が明るくなる。しかし並列だと電池を何個つかおうと明るさはかわならない。その並列である。

 堀江の作品の特徴は、この「並列の夢」に象徴されている。ある存在がかわらずにあること。しかし、その奥にあるものはひとつではない。ささやかな光を支える複数の存在。複数のエネルギー。それは積み重なって巨大になるわけでもいな。互いにぶつかりあい、エネルギーを消耗してしまうこともない。

 堀江は、そうした状態に「詩」を感じているのだと思う。