「現代詩手帖」12月号(6)(思潮社) | 詩はどこにあるか

詩はどこにあるか

詩の感想・批評や映画の感想、美術の感想、政治問題などを思いつくままに書いています。

「現代詩手帖」12月号(6)(思潮社)

多和田葉子「冬服」

重たく 濡れて うつむく
しずく じゅくじゅく じしゅく
に蓋をして 終わりにしたい

 音のつながりがおもしろい。

廿楽順治「富山のくすりや」

おまけの
おそろしい風船をあげよう
詩をやめられるよ

 どうせなら富山弁で言ってもらいたい。標準語で言えば、嘘の上塗りになる。「おっとろしい風船やっちゃ/詩、やめられるっちゃ」。でも、まあ、そんなことは言わない。
 でも、この詩の最後の一行、必然性があるんだろうか。
 私の偏見かもしれないが、富山の薬売り(くすりや、というのは初めて聞いた)は、詩のことに口をはさまないだろう。

中村稔「月の光」

川の流れを、これ、と云って、一滴掬いとったとしても
川はとどめようもなく流れているから、その一滴も
流れ去った水の一滴、川には漣が立ち、せせらぎが聞こえるが、
その音はすべて失われたものたちの囁きなのだ。

 「失われたものたち」。中村が書きたいのは、このことばだろう。さらに突き詰めて言えば「失われた」。「失う」という動詞というよりも、「失われた」という状態。「失われて」、なお、そこに存在するもの。こういうことを語ることばは、静かに、丁寧でないと響かない。中村は、実に丁寧に、静かに、ことばを動かしている。

広瀬大志「毒御伽」

軽々しい愛は
ありふれた言い回しで叙情的に感染する

 「軽々しい」がほんとうに軽々しく聞こえる。それが狙いなのかもしれないけれど。

柳本々々「距離」

好きな窓辺をいつもさがして見つけては指さした。
わたしもその窓辺を見て、いいかも、といったりした。

 「指さした」「いったりした」。過去形であることが全てだ。記憶である。「距離」とを「時間の距離」といいなおせば、「過去」になる。

 谷川俊太郎の『虚空へ』の短い感想を書いていたら、現代詩手帖の作品の感想も短くなってしまった。

 


*********************************************************************

★「詩はどこにあるか」オンライン講座★

メール、skypeを使っての「現代詩オンライン講座」です。
メール(宛て先=yachisyuso@gmail.com)で作品を送ってください。
詩への感想、推敲のヒントをメール、skypeでお伝えします。

★メール講座★
随時受け付け。
週1篇、月4篇以内。
料金は1篇(40字×20行以内、1000円)
(20行を超える場合は、40行まで2000円、60行まで3000円、20行ごとに1000円追加)
1週間以内に、講評を返信します。
講評後の、質問などのやりとりは、1回につき500円。
(郵便でも受け付けます。郵便の場合は、返信用の封筒を同封してください。)

★skype講座★
随時受け付け。ただし、予約制(午後10時-11時が基本)。
週1篇40行以内、月4篇以内。
1回30分、1000円。
メール送信の際、対話希望日、希望時間をお書きください。折り返し、対話可能日をお知らせします。

費用は月末に 1か月分を指定口座(返信の際、お知らせします)に振り込んでください。
作品は、A判サイズのワード文書でお送りください。
少なくとも月1篇は送信してください。


お申し込み・問い合わせは、
yachisyuso@gmail.com


また朝日カルチャーセンター福岡でも、講座を開いています。
毎月第1、第3月曜日13時-14時30分。
〒812-0011 福岡県福岡市博多区博多駅前2-1-1
電話 092-431-7751 / FAX 092-412-8571

**********************************************************************

「詩はどこにあるか」2021年8、9月合併号を発売中です。
200ページ、1750円(税、送料別)
オンデマンド出版です。発注から1週間-10日ほどでお手許に届きます。
リンク先をクリックして、「製本のご注文はこちら」のボタンを押すと、購入フォームが開きます。

https://www.seichoku.com/item/DS2002171


オンデマンドで以下の本を発売中です。

(1)詩集『誤読』100ページ。1500円(送料別)
嵯峨信之の詩集『時刻表』を批評するという形式で詩を書いています。
https://www.seichoku.com/user_data/booksale.php?id=168072512

(2)評論『中井久夫訳「カヴァフィス全詩集」を読む』396ページ。2500円(送料別)
読売文学賞(翻訳)受賞の中井の訳の魅力を、全編にわたって紹介。
https://www.seichoku.com/user_data/booksale.php?id=168073009

(3)評論『高橋睦郎「深きより」を読む』76ページ。1100円(送料別)
詩集の全編について批評しています。
https://www.seichoku.com/item/DS2000349

(4)評論『高橋睦郎「つい昨日のこと」を読む』314ページ。2500円(送料別)
2018年の話題の詩集の全編を批評しています。
https://www.seichoku.com/user_data/booksale.php?id=168074804


(5)評論『ことばと沈黙、沈黙と音楽』190ページ。2000円(送料別)
『聴くと聞こえる』についての批評をまとめたものです。
https://www.seichoku.com/user_data/booksale.php?id=168073455

(6)評論『天皇の悲鳴』72ページ。1000円(送料別)
2016年の「象徴としての務め」メッセージにこめられた天皇の真意と、安倍政権の攻防を描く。
https://www.seichoku.com/user_data/booksale.php?id=168072977

 

 

問い合わせ先 yachisyuso@gmail.com