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実名小説『DAZZLING』 第67話『虹』

『…実は…
さっきも話したレイのメモの事なんですが…』
マコトはケビンに全ての疑問をぶつけようとしていた。
『…お前が持っている手帳から破られていたとかいう…メモか…』
『…はい…
そこに書いてあった…GO TO JAPAN  …という文字なんですが…
チェロキー語で書かれていました…
それと他にもチェロキー語を日本語に訳しているような文字も…
いくつもあります…』
ケビンはマコトの言葉に驚きながらも静かに答えた。
『…そうだったのか…チェロキー語が…
もしかすると…お前の父親とニーナ達の父親…
何らかの関係があるのかもしれないな…』
マコトは頷くともう一つの疑問を口にした。
『…それと…店の名前…
GOLDEN GATE …
どういう意味なんですか…
実は同じタイトルの曲をかつてレイが歌っていたものですから…』
『…そうだったのか…レイが…』
ケビンは深くため息をつくと話を続けた。
『…オリビアがつけた名前だ…
小さい頃彼女の兄貴が教えてくれた話だそうだ…
ただのおとぎ話みたいなもんなんだが…』
『…詳しく…詳しく教えてください…』
マコトの懇願にケビンは頷くと話を続けた。
『…遠い昔…
スペインのガリシア地方の田舎にエスペランザという村があった…
そこに住む人々は貧しいながらも必死に助け合いながら毎日を生きていた…
村人達は先人達がつけてくれた村の名前…
エスぺランザ…希望…だけは捨てずに一生懸命、日々を生き抜いていたんだ…
しかしそんなある日、その村からある伝染病が流行ってしまった…
当時の軍隊はその村から隣村へと感染が拡大することを恐れ、隣村へと続く唯一の道である橋を封鎖したんだ…
医師すらいないその村に自分達で病気と闘う力などあるはずもない…
村人達は次々に倒れ…そして最後の時を待っていた…
そんなある日…
封鎖された橋に虹がかかったんだ…

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あまりに美しいその橋を彼らはゴールデンゲートと呼んだ…
そしてその後信じられない事が起こったんだ…
ゴールデンゲートを見たもの達の顔から次々に病の跡が消え…
村人達は完全に立ち直った…
奇跡が起こったんだ…ただ…』
『…ただ?…』
マコトはケビンが発したその言葉に、この物語の悲しい結末を敏感に感じ取っていた…
最後の希望はまるで気泡が割れるように…
小さな音を立てて水滴となり地面へと落ちた…
レイの歌がマコトの脳裏をよぎっていた…。

実名小説『DAZZLING』 第66話『自責』

『…そうだったのか…ニーナとお前が…』
マコトから全ての話を聞き終えると、ケビンは夜空を仰ぎながら深くため息をついた。

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『…ニーナと俺との出会いは…
やはり偶然ではなかったという事でしょうか…』
マコトの問いかけにケビンは小さく頷いた。
『…まぁ…そういう事だろうな…
ニーナの真意はわからないが…
彼女はお前の事をラック・パーカーだと知って近づいてきた…
そう考えるのが普通だろう…
そしてレイも同じだろう…』
『…でも…何故…何の目的で…
ケビンさん…俺は本気で…本気でニーナを…
ニーナを愛していたんです…』
マコトの言葉にケビンは優しく諭すように答えた。
『…わかっている…ニーナも…
きっとニーナも…そうだったんだろう…
だから…だからこそ離れて行った…
そうは思えないか?…
結果として愛する人間を騙している…
自責の念…
だとすればお前の前から姿を消した理由がわかる…
それに…お前まだ…
ニーナが生きてるって信じてるんだろう…』
『…はい…今俺の友人…
ニーナと親友だった人間がスペインへ行ってます…
明日にはマドリッドに着くはずなので…
何らかの連絡があるはずです…』
『…そうか…ただ…
オリビアはニーナとお前の事は知らなかったんだろうな…
知っていれば何か話が出ていたはずだ…』
ケビンの言葉にマコトは小さく呟いた。
『…オリビアとニーナがそんな関係だったとは…』
その時マコトはふとある疑問を口にした。
『…でも…
オリビアとニーナは髪の色も容姿もまるで違っています…
本当に叔母と姪なんですか…』
ケビンはその問いにきっぱりと答えた。
『…ニーナの母はスペイン人なんだ…
そしてオリビアとニーナの父は兄妹だが腹違いだ…』
『…そうだったんですか…』
『…ああ…
ニーナの父親は、アメリカの先住民族であるチェロキー族の血を引く混血だと聞いている…』
マコトはその言葉に愕然とした。
数奇な運命の糸がまた一つマコトを暗い闇へと導こうとしていた…。

実名小説『DAZZLING』 第65話『繋がり』

『…ラック…お前なぜ…
何故…レイを知っているんだ…』
ケビンの言葉にマコトは逆に驚きを隠せなかった。
『…ケビンさんこそ…
レイをレベリアーノを知っているんですか…』
『…知ってるもなにも…奴はオリビアの甥だ…』
ケビンの言葉にマコトは愕然とした。
『…甥…甥って…じゃあ…
ニーナは…ニーナもオリビアの…』
『…そうだ…ニーナはオリビアの姪だ…
『…ケビンさん…詳しく…詳しく説明してください…』
ケビンは何の事かわからず、マコトの尋常ではない様子から急き立てられるように言葉を発した。
『…詳しくって言ったって…
今話した通りだ…
レイとニーナの父親はオリビアの兄貴…
さっき話した塀の中のスペイン・マフィアだ…』
マコトはその言葉にいくつかの疑問がつながっていくことを感じていた。

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『ケビンさん…レイが…レイが死んだのはご存じでしたか…』
『…ああ…ニュースで見たよ…信じられなかった…
本当に…本当に…残念だった…』
『…それって…もしかすると…
さっきのチャイニーズ・マフィアが絡んでいるってことですか…』
ケビンはマコトの言葉に首を振った。
『…わからない…ただ…可能性としては非常に大きいだろう…』
『…レイの死因は薬物の大量摂取でした…
アンフェタミン…アンフェタミンの化合物です…』
ケビンはゆっくりと目を閉じるとマコトに語り始めた。
『…やつらのやりそうな事だ…俺も元軍人だ…
アンフェタミンがどんな物かはわかってる…
そんな危険なもの売り買いするのは奴らくらいだ…
レイはおそらく奴らに殺されたんだろう…』
『…このことは…このことはオリビアは知っているんでしょうか?』
マコトの問いかけにケビンはきっぱりと言い放った。
『…いや…知らないだろう…
先日の連絡でもそのことは話に出てこなかった…
逆にこの事を教えればオリビアはレイの遺体の引き取りにも行くだろう…
そうなれば奴らの思うつぼだ…
気の毒だが俺の口からは話せなかった…』
『…という事はレイの死はオリビアをおびき寄せるため…
そうとも考えられますよね…』
『…ああ…惨い…惨いことをする奴らだ…』
ケビンは怒りの矛先を見失いギュッと拳を握りしめた。
『…ところで…ラック…
お前とレイ達の関係…聞かせてくれないか…』
マコトは現在までのマコトの周りで起こった事の全てをケビンに打ち明けた。
海の潮風が夜風と混ざり合い二人を優しく包んでいた…。

実名小説『DAZZLING』 第64話『ヴェルニー公園』

マコトはヴェルニー公園の中のベンチに座り、目の前に広がる横須賀港に浮かぶ空母を眺めていた。
ふと時計を見ると夜中の0時を回っていた。
『…盗聴の恐れあり…深夜0時…ヴェルニー公園で…』
ケビンのメモにはそう書かれていた。
ほどなくマコトの視界に黒い人影が映った。
人影はゆっくりとこちらに近づいてきた。
『…ラック…ラックか?』
『…ケビンさん…そうです…』
『…すまん…なかなか帰らない常連が一人いてちょっと遅れてしまった…』
『…いや…ここの景色があまりにも素敵なんで全く飽きませんでした…』

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ケビンはマコトの隣に腰かけると手に持っていた缶ビールをマコトに渡した。
『…ありがとうございます…』
『…おう…
ここは本当に日本じゃないみたいだ…
俺もここが大好きなんだ…
オリビアもこの公園が大好きだった…
ここはなラック…
フランス式の庭園で、日本を近代化に導く手伝いをしたヴェルニーって人にあやかって造られた公園なんだ…
そしてここはその中でも一番人気があるバラの園だ…
男二人じゃ似合わないけどな…』
ケビンはそう言って肩をすくめた。
『…ところでケビンさん…さっきの話の続きですが…』
マコトの言葉にケビンは真剣な顔になった。
『…いや…さっきはすまなかった…
未だに奴ら俺を監視しているようなんだ…
念には念を入れとかないとな…
店の中だと盗聴されてる恐れがあるからこんなとこに呼び出しちまった…』
『…いえ…大丈夫です…
ケビンさんこそ…危険な目にあわせてしまって…すいません…』
『…いや…俺の事はいい…
それよりオリビアは無事だ…
安心してくれ…ある場所に身を寄せている…
連絡も頻繁ではないが取り合っている…』
マコトはケビンの言葉にホッとし笑顔になった。
『…そうですか…よかった…本当によかった…
もう自分の傍で死んでいく人をみたくないですから…』
マコトの言葉にケビンは不思議そうな顔をした。
『…ラック…自分の傍で死んでいく人を見たくないって…
誰か死んだのか?』
『…はい…実は友人のスペイン人ギタリストが…先日…』
『…スペイン人…ギタリスト?…日本でか?…』
ケビンは何か思い当たるような顔でマコトを覗きこんだ。
『…そいつの名前は?…』
『…レイ…レベリアーノ・アルベルタ・エステーベ…』
街灯の光がケビンの唖然とした顔を映し出していた…。

実名小説『DAZZLING』 第63話『伝言』

『…で…オリビアはそのチャイニーズ・マフィアに連れていかれたんですか?…』
マコトの問いかけにケビンは右腕を掲げると笑顔で答えた。
『…ラック…俺が傍についててそんな事させると思うか?
オリビアはすんでのところで逃がしたよ。
ただ…こっちはこのザマだけどな…』
ケビンはそう言うと右足をゆび指した。
その時マコトははじめてケビンの右足が擬足だという事がわかった。
『…ケ…ケビンさん…』
神妙な顔になったマコトにケビンは努めて明るく振る舞った。
『…おい…ラック…
お前がそんな顔するな…
足の1本や2本…どうにでもなるだろ…
ただ車の運転や買い付けに外回りしなきゃいけない雑貨屋はちょっと無理になっちまったがな…
こんなしがない飲み屋でもけっこう常連がいるんだぞ…
どうだ…いい店だろう…
ほとんど俺の手作りだけどな…
お前も確か飲食店やってるんだろ…
プロから見てどうだ?…そこそこイケてるだろ…』
ケビンの言葉にマコトは頷くと笑顔で答えた。
『…ケビンさん…最高の店だよ…
俺最近思うんだ…
店ってそこに集う人が造るものなんだよ…
俺達はそれをアシストするだけ…
お客さんの笑顔がその店の価値なんだよ…
この店は…この店には笑顔がたくさんある…
そう感じるよ…』
ケビンは微笑みながら答えた。
『…そうか…
飲食店のプロからお墨付きをもらったら俺も鼻が高いってもんだ…
今夜の客に自慢してやろう…ハッハッハッハッ…』
そういうとケビンはカウンターに置いてあったメモ用紙に何か書きつけるとそれをマコトに渡した。

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マコトはそれを読むと軽く頷き笑顔で答えた。
『…じゃあ…俺はこれで帰るよ…
オリビアがどこにいるのかわかったら連絡してよ…
ケビンさん…仕事がんばってね…』
マコトはドアを開けると店の外へと出た。
夕暮れのオレンジ色の空がマコトの右頬を照らしていた…。