実名小説『DAZZLING』 第58話『店名』
実名小説『DAZZLING』 第57話『アメリカ』
実名小説『DAZZLING』 第56話『オリビア』
『…オリビア…オリビアって誰なの…』
マリの問いかけにマコトは我に帰った。
『…オリビア・ウエルズ…俺の…
俺の姉のような存在の人だ…
ただ…グループホームを出てからもう20年以上も会ってない…
俺より確か5歳年上だったと思う…
当時まだ小さかった俺を本当の弟のように可愛がってくれた…
俺が日本に来てからもしばらくの間…
グループホームを手伝っていたと思う…
彼女もまた孤児だったんだ…』
マコトの答えにマリは続けた。
『そう…あなたの過去を知る人…
ねぇ…そのオリビアさんって…
今…今どこにいるの?…』
『…横須賀…横須賀で雑貨屋をやっているはずだ…』
『…横須賀!…横須賀って日本にいるの!』
マリはマコトの答えに驚嘆した。
『…確か…もう10年位前…
一通の手紙をもらった…
その手紙からグループホームの移転…
シスターが亡くなった事…
彼女が結婚し…今日本にいる事…
全てを知ったんだ…』
『…全てを知ったって…
あなた…会いにいかなかったの?』
マリの質問にマコトは黙って頷いた。
『…ああ…俺はラック・パーカーを捨てた男だ…
あの頃の俺は自分の過去を…
ミスター・ブラックと揶揄されていた自分を消したいと思っていた…
だから…
だから本当に姉のように俺を可愛がってくれたオリビアにさえも…
不義理をしてしまった…
本当に馬鹿だった…』
『…でも連絡先はわかってるんでしょ…』
『…ああ…
変わっていなければその手紙の住所にいるはずだ…
ただ今更…こんな俺に会ってくれるだろうか…』
マコトの言葉にマリはまっすぐに前を見据えるとしっかりと言い放った。
『大丈夫!…女は強いのよ…
そんな事絶対水に流してくれるわ…
それもあなたのお姉さんだった人でしょ…
きちんと昔の事謝ってきなさいよ…
絶対許してくれるわ…』
マリの言葉が冷たくなったマコトの心に少しづつ沁みこんでいくのを、マネージャーの大塚はカウンターの隅から見守っていた。
『…マコっちゃん…よかったな…』
大塚は心の中でそうつぶやくと黙って店のドアを開け、そっと店外へと出て行った…。




