村上さんのところ
村上春樹 新潮社 2015 さし絵はフジモトマサル 期間限定でメールを受け付けてすべてに目を通し、一部に返信をしてまたその中から抜き出して本にしたという。収録数/返信数/メール数/サイトの累積ページビュー数473 / 3716/ 37465/ 106773168 投稿の質問と返信内容がかみあっていないのもあるが、返信内容からは村上春樹さんの考え方やひととなりが感じられる。 主にハルキストと言うファンが投稿に多いのだろう。たまにそうではない人も寄せている。投稿した人のお悩みや関心ごとから、八つ当たりや筋違いな苦情みたいなものや村上さん宛にどうでもよい身の回りの報告もある。「生協の白石さん」のように素敵で愉快な回答も多い。 著者新刊の「壁とその不確かな壁」には図書館や本に関する思いが感じられる。その「本」や「読書」に寄せて193ページ目の364番目のメールとその挿絵が面白かった。「本の魅力が理解できずに生きてきた」というタイトルで、6歳で図書館に行き本を借りて読む娘さんを持つ会社員さんは子供のことを少しは理解したいと『一般に本を好んで読まれる方は、なぜ読むのでしょうか』とお尋ねになっている。『本を読んでいると、その間別の世界に行くことができます。(中略)本はものすごく個人的な、自由な、融通の利くヴィークル(乗り物)なのです。子供たちは物語の世界を通過することによって、現実世界に自分たちをうまく適合させていきます。読書はとても大事な体験です。優しく見守ってあげてください』と回答。挿絵は本棚の前に散らかり重なって積んでる本に乗るカワウソ?の子供と腕組みをしてみている大人のカワウソである。その数ページ前には高校教員からの「生徒指導の教師は壁でしょうか」(360)河合隼雄氏との交流対談の本にも触れた投稿「本当につらい時、闇に耐える強さ」(370)数ページ後に「娘の兄弟姉妹は19人」(373)という親への回答があり興味深い。