10年間使い続けてくれる学校へ | しずえばあちゃんの回想録 “We Can Do It !”

しずえばあちゃんの回想録 “We Can Do It !”

教師生活35年、子供3人。
パワフルに生き抜くしずえばあちゃんの
子育て論、教育論、人生論を綴っていきます。

人生の後半で取り組んだ漢字学習についても
情報を発信していきます。かんじクラウド株式会社 http://kanji.cloud

出発前に10年間の付き合いがある伊那北小学校に行くと書いた。

しかし、この5年間は現地には行っていない。zoom研修を2回ほどやっただけだ。

久しぶりに向かう学校への緩やかな坂道、校庭の桜の木、校舎・教室、何もかも懐かしかった。

この学校に何度足を運んだことだろうか。

桜満開の春も、紅葉がきれいな秋も、冬の寒い頃も・・・

 

きっかけを作ってくれたのは、通級指導教室の先生。

2013年のLD学会主催の研修会に参加した時、

カード形式の道村式漢字学習法があると紹介された。

早速私に連絡が来て、どこかで研修会をやっていませんか?と。

愛知県の春日井市の小学校に授業と研修をしに行きます。と伝えると、

高速を飛ばして聞きに来てくれた。

 

伊那市・駒ヶ根市はその先生を中心に「読み書き支援事業」をやり始めていて、

MIM(多層指導モデル)の検査や指導アドバイスなどを積極的にやっている地域で、

幼児期から入学後の文字の読み書きに苦労している子たちを見取る体制作りをしていた。

 

その支援がうまくいっても、

2年生以降の漢字学習でつまずくのをどう打開したら良いのかと悩んでいた時だった。

春日井市での私の授業&研修会に参加して、これだ!と思ったそうだ。

 

そして2014年から何度も行って、全学年に授業をした。

その頃のカードは私の手作りでつたないものだったが、しっかり使ってくれた。

 

最初から書かない。まずはクラスのみんなで唱えて、覚えて、家でも唱えて覚えて・・・

ちゃんと覚えてきたかな?と友だち同士でチェックする。

あるいは先生が出したいろんなお題で漢字集めを班で協力する。

 

私が小学校で実践したことやこうしたら盛り上がるよ、これが大事!などと研修会で伝えると、

先生たちは熱心に実践してくれた。

こんなにも教師集団が一丸となって取り組んでくれる学校がありがたいと思った。

校長先生を始め、特別支援担当の先生が音頭を取ってくれて、

通常級の先生たちもクラスでガンガンに取り組んでくれた。

 

先生たちは子どもたちが友達同士で楽しそうに教え合って、

どんどん習得していくことを実感していたという。

この学校には外国にルーツをもつ子も多くいて、

その子たちも輪の中に入って習得していると言っていた。

 

そして、データも取ってくれた。

この表のデータは当時実践してくれた学校の導入した1年目の結果である。

3番目に伊那北小学校のデータもある。

 

会社を設立した2018年の冬に、

パンフレット作りのために学習の様子を撮影させてもらった。

 

3年生のクラスだった。

私は3年生の漢字が一番難しいと思っている。

ややこしい覚えにくい形がいっぱい出てくる。

意味も抽象的なものを示す字が多くなり、分かりにくい。

音読みしかない漢字も増えてくる。

全国どこへ行っても、3年生から漢字につまずく子が激増する。

そして、そのまま高学年になって、苦手なままで・・・

 

3年生の授業の様子はこのようだった。(パンフレットに掲載した写真から)

 

 

先生が出したお題に、班で協力して既習漢字を書き出して競争している。

 

覚えたかどうかは友達同士でチェック。最初からテストではない、これがいいのだ。

この子たちの楽しそうな顔!こんな笑顔になれる学びが、漢字の中にはあるのです。

体を使って、友達とひそひそと力を合わせて、友達のチェックをして・・・

 

この子たちは今中学3年生になっているはずだ。

中学校の漢字もあれだけ部品を覚えたのだから、

漢字をかたまりの「分解・合成の視点」で、6年生までの漢字を制覇したはずだ。

自信ありげな顔をしているだろうか?

 

と、ちょっと話は跳ぶが、夜に会った先生たちと記念写真を撮った。

そのうちの一人の先生が、翌日高校生の娘さんにその写真を見せたら、

「知っている!4年生の時にこの先生の授業を受けた!私にとっては"革命的”だった!」

と横浜に戻ってからメールをもらった。

そうか、○○小学校にも行ったなあ。あの時に真剣に聞いてくれた子の中にいたんだ!

ああ、うれしい。

 

このパンフレットに載った当時3年生の子たちも、漢字好きになってくれているだろうな。

こんなふうに楽しそうに取り組んで、

その後高学年の漢字もミチムラ式の漢字カードを使ってくれていたのだからね。

 

~~~~~~~

今回も伊那北小学校は全学年2クラスずつあった。

その2クラスを一つの教室に入れて授業をした。

椅子だけを並べたり、床に座ったりして聞いてくれた。

 

4年生の授業の様子を教頭先生が撮ってくれた。

背筋をピンとして、しっかり黒板を見て、聞き入っている様子が伝わってくるでしょ!

私もすごい顔して子どもに必死に話しかけている。熱量はきっと伝わっている。

 

2年生の授業では、「カタカナ探し」をやったり、「身近な言葉集め」をやったりしたが、

これがとってもおもしろかったらしい。

授業の後、漢字カードとマジックを持って廊下を追いかけてきた男の子に、

「サインしてください!」と頼まれた。

「えっ、今使っているこのカードにか?」「うん、ここに書いてください!」と言う。

一人に書いたら、他の子は手の甲を差し出して、「私も!私も!」とたくさんの手に囲まれた。

「いやいや、そこはやめておこうね。」とストップした。

 

すると、中休みに保健室へ駆け込み、

今習ってきた漢字のおもしろいことを保健の先生に必死に話したそうな。

それをまた教頭先生が撮ってくれた。

「わあ~、そんなに楽しかったんだ。うれしいなあ。

この写真をブログに使いたいけど、顔が映っているからなあ・・・」といったら、

ニコちゃんマークを付けて送ってくれました。

 

どんな授業をしたかは、後でまとめて書くとして、

今回の訪問は5年ぶりだから、先生方の顔ぶれはすっかり変わっていた。

異動してきて、この学校は漢字カードを使っていますと言われても、

経験したことのない方法だから、先生たちは戸惑うだろう。

だから、直接行って授業もして先生たちに語りかけると、納得の表情をしてもらえた。

 

先生の異動は避けられないことで、そのうち漢字学習法も元の方法に戻ってしまう。

そんな学校がいくつもあって残念な思いをしている。

 

伊那北小学校さん、継続してくれてありがとう。

校長先生は何度も変わったけど、継続してもらえたことはとてもありがたいことだった。

きっと使った先生が効果と子どもたちが楽しく取り組んでいる様子を報告してくれて、

校長先生も教員の意図をくみ取って継続の決断をしてくれたのだと思う。

今回の校長先生も初対面ながら送迎や教室への移動案内も全部してくださり、

全ての授業を見ていただいた。

きっとミチムラ式とは何ぞや?ということを理解していただけたと思う。

 

このような学校の教育方針、学習方針はどのようにつなげていくのだろう?

私は管理職の経験がないからよくわからないが、

この漢字学習法がスタンダードになっていないことが、大きなネックなのだ。

 

私の力が尽きるまでには何とかなるかなあ・・・?

まだまだ元気に動き回りたいけど、一体いつまでできることやら?