前回の「盲学校の漢字学習の授業風景」の映像を、
「点字学習を支援する会」にUPしてあるページにリンクしましたが、
たぶんWindowdパソコンでしか見られないと思う(13年前に作った方法です)ので、
社長が早速、今流行のYouTube画像に加工してくれました。
紹介する7つの映像は皆さんに是非見てもらいたいと思います。(どれも短いです。)
漢字を見たことも書いたこともない盲児が、
漢字学習を通して最終的にどんな力を付けたいのか、どんな学びにつなげたいのかが、
段階的に明確になっていると思います。
全盲の子たちは、音声でしか(あるいは、点字のかな文字でしか)認識できなかった言葉を、
使われている漢字を知ることによって、その言葉を明確に理解することができるようになる。
その漢字は同音であっても、意味で区別できる力を身に付けられる。
そして、漢語が多い日本文を、かなだけの点字で読みながらも、
漢字を思い浮かべながら正確に意味が頭の中に残っていって、読み取れるようになる。
それが文章を読むということ。
さらには、情報機器を使いこなすための技能としても必要不可欠な漢字の学習であること。
そんな彼らのこれからたどる学習の道すじを思ったときに、
彼らに身に付けてほしいものは何かが浮かび上がってくる。見えてくる。
指導の道すじを見通して、指導計画を練るというのが指導者には最も必要とされることでしょう。
ただ「漢字を覚えさせればいい」という教え方・学び方ではなく、
その先のことを考えた指導が誰にでも必要だと思います。
盲学校の子は自ら見て確認することはできない世界だから、
ていねいに指導する必要があったけど、
通常の子たちには、そのきっかけと方向性を示してあげて、
時々それを意識させるような指導を行うだけで、自ら学び出します。
また、特性があって漢字が苦手という子たちには、また違ったアプローチがあると思いますが、
その子たちに合ったものを提供できるような計画と系統づけた指導が必要でしょう。
そういうものを見つけてあげることの参考にしていただけたらと思います。
では、紹介します。
7つの動画が順次みられるページは、かんじクラウド(株)のHPの『動画を見る』です。
それぞれ一つずつ紹介すると・・・
新出漢字の形や熟語を確認しています。
新しく習った漢字でも、組み合わせがさっと出てきます。頭に浮かんでいる証拠です。
弱視用にマジックで太く書いてありますが、字の形に触れて確認できる点図で作成したカードです。
カードで字体を確認したら、即座に音訓セットで漢字を特定しています。
そして、音読み熟語をいくつか言えます。
漢字の成り立ちは実におもしろい!部品の意味がわかると、漢字同士が結びつきます。
漢字が芋づる式に出てくるのがすごいでしょう。常に関連付けて覚えているからです。
小学校で習う1006字を音読みに並びかえて、使い方や熟語を確認しています。
同音の漢字をその意味の違いで区別し、熟語を適切に言えるようになっています。
さらには、熟語の中の他の漢字も適切に選んでいます。
習った漢字一字だけが分かるのではなく、他の漢字も含めて意味ある言葉になっているのです。
点字の文章はすべてかなで書かれています。
それにどんな漢字が当てはまるか、習った漢字から考えます。
初期の頃は間違った漢字を選択することも多かったですが、徐々に慣れて適切になってきています。
最終的には、仮名で書かれた点字の文章に適切な漢字を当てはめて、選択できる力を身に付けさせたい!
これは⑦に登場するような遠い将来のためではない。
今、現学年の教科書を読んで理解するためには、この力が必要だったのです。
ここまで漢字が浮かべば、かなの文章を読み上げていても適切に理解していると確信が持てます。
漢字の知識を身につけた子どもたちが、キーボードで点字を入力し、音声で画面の文字を確認しています。これは将来絶対に必要な力です。
漢字学習の最も弱者である全盲の子たちが、
ここまで学習を伸ばし、大きな知識で言葉の世界を広げられたのです。
ここに登場する子たちは決して頭脳明晰というわけではありません。
特に、漢字のことを得意気にしゃべるかんなちゃんは、学習が苦手な部類に入ると思います。
だけど、「知りたい!おもしろい!もっと教えて!」の意欲がものすごかった。
ひとたび納得すれば、そのうれしさが次の好奇心を生むという、
好転連鎖の学習を自ら実現させたのです。
この盲学校の子たちに比べたら、
目が見える子たちは、もっともっと自ら学んでいく力があるはずです。
その力を引き出すためには、
好奇心を持たせること、興味関心のるつぼに誘うことです。
はまらせてしまえば、本当に大きな力を自ら得ていくことになるのです。
それが「学ぶ」ということだと思います。
そういう力をどうか引き出してあげてください。