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音路137.雨の紅葉…コンコン(秋うた.3)



今回のコラムは、連載「秋うた」の第三回になります。
前回の第二回では、日本に古くからある「秋の童謡」をたくさんご紹介させていただきました。
今回も 童謡を少しと、ジャズやシャンソンの有名曲をとりあげます。


◇雨の紅葉…夕焼け小焼け

前回コラムでは、童謡「夕焼け小焼け」を紹介しました。

♪夕焼け小焼け

 

1919年(大正8)に中村雨紅(なかむら うこう)が作った歌詞に、草川信(くさかわ しん)が曲を付け、1923年(大正12)に発表された楽曲です。

中村雨紅は、当時の東京府 南多摩郡 恩方(おんがた)村の出身です。
今の、東京都八王子市の上恩方町です。

「雨紅」という作家名は、野口雨情から「雨」の一字をもらい、紅葉の色に染めたという意味のようです。
「雨の中の紅葉」なのかもしれません。

* * *

中村雨紅は、勤務先への通勤のため、恩方村から八王子駅までの約16kmを歩いて通っていましたが、帰宅時に、「夕焼け空」を眺めながら、この歌詞をイメージしたようです。

歌詞の中に「山のお寺の鐘がなる」という部分がありますね。
八王子市西寺方町にある「観栖寺(かんせいじ)」の鐘だというのが有力とはいわれていますが、他にも候補のお寺の鐘が二つ、三つあります。

私の子供の頃もそうでしたが、山あいの里では、夕方になると、いろいろなところから鐘の音が聞こえてきました。
さて、どこのお寺の鐘やら…?
雨紅は、もちろん歌詞の中で特定のお寺を特定はしていませんが、実際に特定できていなかったのかもしれませんね。

* * *

実は、作曲者の草川 信(くさかわ しん)も、多くの童謡の作曲を行った音楽家で、前回コラムで書きました海沼實(かいぬま みのる)の師匠にあたります。
草川は、名前の通り、やはり童謡の巨匠たちが多く生まれた、信州(長野県)の長野盆地(今の長野市)の松代の出身です。
草川のほうの「お寺の鐘」のイメージは、どうも信州の松代あたりのお寺だったようです。

私は、この童謡を聴く方々それぞれにイメージする「お寺の鐘」があっていいのだろうと感じます。
おそらくは、みな「鐘の音色」が違うはず…。

いずれしても、中村雨紅の出身地の東京・八王子の山あいは、童謡「夕焼け小焼け」をイメージさせてくれる一か所であるのは間違いありません。

* * *

実は、この童謡が発表された1923年(大正12)は、あの「関東大震災」が発生した年で、この八王子や、雨紅が長く暮らした厚木市あたりは、まさに大震災で大きく動いた「立川断層」の中心部にあたります。
多くの書物はもちろん、多くの童謡の楽譜も消失してしまいます。
この「夕焼け小焼け」は、無事に残された童謡の中のひとつです。


◇夜長に、童話の朗読を

今、中村雨紅の故郷の東京都八王子市には、「夕やけ小やけ ふれあいの里」という自然体験型レクリエーション施設があります。
自然体験、農業体験、懐かしい日本体験、カエルもいっぱい… ふれあいの里!

「夕やけ小やけ ふれあいの里」サイト

* * *

2023年(令和5)10月に、朗読や絵本の読み聞かせの活動をされている 中田真由美さんが「八王子芸術祭」に参加されたときのことを、ご自身のアメーバブログで紹介されています。

「八王子芸術祭」は、2023年の第一回を皮切りに、10年をかけて各地で開催されるそうです。
2023年は中村雨紅の没後50年にあたり、まずは、この「夕やけ小やけ ふれあいの里」の地からスタートしました。

中田真由美さんは、このイベントで、童話「泣いた赤鬼」の音楽付き朗読をされたそうです。
音楽と朗読は、実は、相性ぴったり!


中田さんのブログ記事

 

中田さんの朗読ではありませんが、素晴らしい童話「泣いた赤鬼」です。
今の子供たちに、ぜひ聴いてほしい、読んでほしい童話です。

朗読「泣いた赤鬼」

 

* * *

秋冬は、夜が長いですね。
そんな夜に、ぜひ童話の朗読鑑賞を、ごゆっくり…。
「朗読鑑賞」の愉しみを、もっと世の中の人に知ってもらいたい…。

 

中田真由美さんによる朗読「ごんぎつね」です。
雨の紅葉… こんこん、ごんぎつね!

中田真由美さん朗読「ごんぎつね(作:新美南吉)」

 

ライターや作家は、文字を読むことを前提に書く書き方と、声で読まれることを前提とする書き方を微妙に変えますが、朗読の魅力は、「語りべ」の力量次第で大きく変わりますね。

 

最近は、育休をとる若いパパたちが、「読み聞かせ」の講習会に参加することも多いと聞いています。


中田さんには、これからも、いろいろなジャンルの朗読や読み聞かせの師として、ご活躍されることをお祈りしております。
この度の、中田さんのご厚情に深く感謝申し上げます。

 


◇きつねと生きる

ここからは、きつねと人間の「ふれあい動画」です。

きつねと老人のお話

 

* * *

日本人が、パンダやカピバラなどの外国動物が大好きなように、外国人は日本のキツネやタヌキが大好き!
キツネは「哺乳綱 食肉目 イヌ科 イヌ亜科」の一部です。
つまり、ほぼ犬。たぶん…。
鳴き声は、犬と猫の真ん中のよう…。

宮城蔵王キツネ村(宮城県 白石市)
(字幕設定で日本語和訳設定ができます)

 

 

「宮城蔵王キツネ村」サイト

野生のキツネは、飼い犬や猫とは異なりますので、専門知識がないと飼育はできません。
十分な知識をもって接しましょうね。
待ってるコン!


◇こんこ、こんこん

自宅の裏山に住む野生のキツネと人間との交流の動画です。
これは飼っているわけでありません。
同じ山に住むご近所同士です。
奇跡のようなキツネ動画をたくさんアップされている方です。
山の動物たちの中には、敵意ではないかたちで、人間に近づいてくるものも稀にいます。

 

 

 

 

この方を紹介した動画

「キツネのコンちゃんと、犬のラムちゃんの絆」

 

2023年(令和5)8月を最後に、コンちゃんは姿を見せなくなったそうです。
人間の保護を受けないで自然の中で暮らす野生動物たちの大半は、数年しか生きられません。
魚、鳥、虫にいたっては、寿命すら わからないものも多くいます。

コンちゃんが、今度は 孫を連れて、ひょっこりと顔を出してくれたら、うれしいのですが…。

* * *

♪犬は喜び、庭かけまわる…
♪猫は、こたつで丸くなる…
おいらたちは…

明治時代に作られた文部省唱歌
♪雪

 


◇更けゆく秋の夜

さて、クリスマスが近づいてきましたね。
クリスマス・シーズンや、キリスト教での葬儀などで、よく耳にする讃美歌があります。

♪What A Friend We Have In Jesus

 

この楽曲を作詞したジョセフ・スクライヴェン(1819~1886)は、アイルランド出身で、カナダに移住し、その後、67歳で事故死しました。
生涯、さまざまな苦労の中でも信仰心を失うことなく、この歌詞を作ったそうです。
作曲者は、チャールズ・コンヴァースで、1865年に歌集に掲載されました。
1865年は、日本は江戸時代末期、米国はリンカーン大統領の時代です。

日本では、原曲の歌詞のような宗教色をもたせた日本語歌詞が付けられた楽曲「いつくしみ深き」があります。

森山良子の歌唱で…
♪いつくしみ深き

 

この楽曲は、日本にもたらされた後、1910年(明治43)に文部省唱歌にもなりました。
ただし、歌詞が宗教色ではないかたちに変更され、小学校等で歌われることになります。

その日本語歌詞には、楽曲「星の界(よ)」(作詞:杉谷代水)と、楽曲「星の世界」(作詞:川路柳虹)があります。
「星の世界」の方の歌詞は、秋の夜空を表現した内容になりました。

♪星の世界

 

更(ふ)けゆく、秋の夜… どうぞ星空を。
老けゆく私も、星空を見上げながら…。


◇秋の「たき火」

ここで、東京の中野区生まれの「秋の童謡」を…。

♪垣根(かきね)の、垣根の、曲がりかど
♪たき火だ、たき火だ、落ち葉焚き(おちばたき)

の歌詞で始まる童謡「たき火」です。

この童謡の作詩者である 巽 聖歌(たつみ せいか:1905~1973)は、岩手県生まれですが、昭和5年頃から約13年間、今の東京都中野区上高田にある「萬昌院 功運寺(ばんしょういん こううんじ)」の近くに家を借りて住んでいました。
彼は、家の周辺を散歩しながら、この童謡「たき火」の歌詞を書いたといわれています。

もちろん、今の東京は、街の安全上、「たき火」が禁止されていますが、当時はまだ、田園のような田舎の風景の場所が、中野にはたくさんあったはずです。

巽 聖歌が暮らしていた家の近くには、樹齢三百年を越す大きなケヤキが6本もある、有名な「ケヤキ屋敷」と呼ばれる家があり、その家にはケヤキの他にもカシやムクノキなど たくさんの樹木があり、その落ち葉を畑の肥料にしたり、たき火(落ち葉焚き)をしていたそうです。

このケヤキ屋敷、前述の功運寺、有名な中野の新井薬師は、歩いてもすぐの地域です。

「垣根の曲がり角」「落ち葉焚き」「さざんかの咲いた道」って、今も残る ここのこと…。


紹介ページ

この歌が生まれた昭和16年当時は、たき火の良い香りと、おだやかな白い煙がたなびく、美しい中野の農村風景と、中野のにぎやかな街の風景が隣り合わせになって、そこにあったのだろうと思います。

* * *

今、「たき火」や「暖炉」の炎の映像を長時間見ながら、心身を癒す方が多くおられますね。
まさか、大都会の中野が、童謡「たき火」の誕生地だったとは…。
東京の中野は、「たき火の聖地」?

日本人が、風の吹く音色を「ピ~プ~」と言葉表現するのは、この歌詞の影響なのかもしれませんね。
秋は、山も、里も、街も、冷たい北風が ピ~プ~!
秋の夜の歓楽街では、ピ~ポ~!

どうする…?
たき火に…♪あたろうか、あたろうよ。
心の中だけでも、どうぞ、あっためて…。

1941年(昭和16)
♪たき火

 

下記の童謡のような暖房になったら、もう完全に冬!
中国の東北部にある、旧「満州」の冬を描いた、戦前からの唱歌。
♪ペチカ

 


◇落ち葉の一枚よ!

「たき火」ときたら…、「落ち葉」が必需品ですね。
「落ち葉」ときたら、風情ある「落ち葉の路」!

「歴音fun」ではお馴染みの、ガーデナーであり、ブロガーの翠さんに、今回もお世話になります。
2022年の翠さんのアメーバブログ記事です。

翠さんのブログ記事

 

翠さんの、このブログ記事では、フォーレの楽曲「夢のあとに」が添えられています。
「落ち葉の路」の写真をながめながら、この楽曲が沁みてきますね。

後日、翠さんご本人から教えていただきましたが、この写真を撮る時に、まさか、あの映画のシーンを思い出していたとは…。

たくましい女性アンナが登場する、英国映画「第三の男」(1949年・昭和24)です。

映画の最後のシーン。

 

女性は、大自然の「紅葉の路」「落ち葉の路」を見て、こんな映画のことを思い出すのですね。

「ふん、男なんて… 落ち葉の一枚よ!」
…降参です。

映画「第三の男」より
アントン・カラス
♪ハリー・ライムのテーマ

 

ビートルズが、ちょっと気分転換に…、なぜ この楽曲を?
「第三」とは、意味深…。
♪ハリー・ライムのテーマ

 


◇パリの秋

みずみずしい若葉もいいですが、秋の「枯葉(かれは)」も、枯れてはいても、実に美しい…。
まさに、こんな枯葉のメロディ!

ナット・キング・コール(1953年・昭和28)
♪枯葉(オータムン・リーヴス)

 

1961年来日時の歌唱
♪枯葉(日本語バージョン)

 

フランク・シナトラ(1957年・昭和32)
♪枯葉

 

エリック・クラプトン(2010年・平成22)
♪枯葉

 

メル・トーメ(1990年のライブ)
♪枯葉

 
マイルス・デイヴィスの1964年(昭和39)のトランペット演奏です。
サックス演奏は、ウェイン・ショーター。
♪枯葉

 

「歴音fun」では、もはや お馴染みの、ドイツでご活躍の黒川彩子さんのフルート演奏。
まさに、紅葉の森が歌っているような、歌うフルート演奏。
それは、ドイツの枯葉!
フルート:黒川彩子、ピアノ:渡部志乃(2023年10月収録)。
♪枯葉

 
岸 洋子(1964年・昭和39)
訳詩は、中原淳一
♪枯葉

 

たまりません… 枯れ葉の音楽世界!

この曲は、1945年(昭和20)に、フランスのバレエ音楽として作られましたが、シャンソン歌手のジュリエット・グレコらが歌って世界に広がり、シャンソンのスタンダード曲、世界のスタンダード曲になりました。
哀愁の枯れ具合… フランス語歌唱!

ジュリエット・グレコ
♪枯葉

 


◇ニューヨークの秋

山や里の秋の風景や、パリの秋、日本の秋も最高ですが、米国ニューヨークの大都会の秋も、捨てたものではありません!

1934年(昭和9)の米国のミュージカル「サムズ・アップ」で使用された、ジャズのスタンダード曲があります。
作曲したのは、ジョージ・ガーシュウィンの愛弟子で、実は米国人ではなくロシア出身の音楽家ヴァ―ノン・デューク。
ロシア革命を逃れ、米国に亡命しました。

彼がニューヨークの東にあるコネチカット州にいた時に作られた曲のようですが、ひょっとしたら、イメージはロシアの紅葉?
歌詞は、完全にニューヨーク仕様です。
名演奏や名歌唱が、山のように ありますが、ここは少しだけ…。

ダイアナ・クラール(エルヴィス・コステロの奥様)(2020年)
♪オータム・イン・ニューヨーク

 

サラ・ボーン(1956年)
♪オータム・イン・ニューヨーク

 

エラ・フィッツジェラルド&ルイ・アームストロング(1957年)
♪オータム・イン・ニューヨーク

 

チャーリー・パーカー(1949年)
♪オータム・イン・ニューヨーク

 

チェット・ベイカー(1960年)
♪オータム・イン・ニューヨーク

 

人は歳をとると、イチョウの黄色の葉が、くるくると舞い落ちる様子を見て感傷的になったり、地面に積もった黄色のじゅうたんを見て、次世代の「肥やし(栄養)」になってくれと手を合わせてみたり… ついつい落涙、紅涙。

私もいつか、肥やしに…。
「秋」は、なぜだか 感傷的な気持ちになりますね。

さて、あなたの紅葉は…、あなたの枯れ葉は…。

「枯れる」ことは、決して悪いことではありませんね。
枯れて、誰かの心の栄養に…。

* * *

次回の「第4回」は、連載の最終回になります。

2023.12.12 天乃みそ汁

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