カーペンターズ「青春の輝き」、バーブラ・ストライザンド「ウーマン・イン・ラヴ」、スリー・ディグリーズ「ウーマン・イン・ラヴ」、マライア・キャリー「マイ・オール」、レイ・パーカーJr & ザ・レイディオ「ウーマン・ニーズ・ラヴ」、男性から男性への忠告、愛の中で生きる、ロック・洋楽。

 

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音路(41)愛の迷走【1】 愛に生きる女 ~ 灯台の灯り



◇「愛の迷走」シリーズ

今、コロナ感染防止に関する政策、支援政策、経済対策など、さまざまな迷走が日本を包んでいますね。
今回のコラムからは、そうした迷走の話ではなく、男女の恋愛の迷走について考えてみたいと思います。
男女の「愛」について描かれた楽曲、女性の目線や意識を強く歌詞に表現した楽曲などを、少し連載でご紹介していきたいと思います。
名付けて「愛の迷走」シリーズです。

一応、今回から6回程度を目途に、ひとかたまりとして考えています。
ネット掲載アップでは、連続ではなく、途中で別の内容が入ってくる場合がありますが、「愛の迷走」として番号を付してまいります。

どの回の内容にも、洋楽の大ヒット曲、名曲がありますので、その歌詞を中心に見ていきたいと思います。

* * *

男の私が文章を書きますので、どうしても男性目線で歌詞を考える傾向があるかもしれませんが、女性の読者の方々には、そうした男性目線や思考も少し感じてみていただきたいと思っています。
実は、とりあげる楽曲の作詞作曲のほとんどが男性なのです。

今回 登場します、歌唱力が頭抜けた女性歌手たちは、男性が書いた その歌詞を納得し、見事に歌い上げています。
ひょっとしたら、何かの歌詞修正をした可能性も十分にありますね。

シリーズの中で登場する男性歌唱の楽曲は、歌唱表現は凛々しいものばかりですが、歌詞内容に、迷走や弱さを感じるものを選んでみました。
男女の恋愛の感じ方の違いを、歌詞から見てみたいと思います。


◇愛に生きる女 ~ 愛の扉

今回のコラムは、「愛の迷走」シリーズの第1回として、さまざまなかたちの「愛に生きる女」の「女心(おんなごころ)」を描いた楽曲をとりあげてみたいと思います、

「愛に生きる女」というイメージの楽曲は、洋の東西を問わず、昔からたくさんありますね。
「愛に生きる男」というイメージの楽曲は、なかなか思い出せません。

男性の恋愛観を表現する場合は、その歌詞から愛情を強く感じはしても、「愛に生きる」「愛のために生きる」というイメージが、なかなか わいてきません。
男性の場合は、「愛」以上に、「勝負に生きる」、「戦いに生きる」、「ひたむきに生き、突っ走る」など、男性特有のイメージの楽曲のほうが多いかもしれません。

* * *

男性の心情を表現する場合は、「(特定の)恋人のために命をささげる」、「(特定の)恋人のためにこの身がある」、「(特定の)あなたがすべて」というような、対象が絞られ、そこに突き進むような表現の歌詞が多いかもしれません。
反面、反動である「挫折」や「悲しみ」も、未練をいつまでも残しながら、相当に深く歌詞に表現されることも多いですね。
「愛の中で、愛に包まれ、自身は生きる」というイメージとは、何か違う気がしてきます。
もちろん女性にも、こうした傾向の歌詞はありますが、「母性愛」のような歌詞表現は、男性の中には生まれにくいのかもしれません。

他方、男性に多いのは、相手への一途な想いが、意味を変えて同時複数的に発生することですね。
ようするに「浮気心」も多く起きてくるのです。
一部の彼らは、ことさら否定もしません。

* * *

日本の平安時代もそうでしたが、貴族の男性は、複数の女性の家に、それぞれ通うのが一般的な恋愛のスタイルです。
戦国時代や江戸時代のような、男女の特殊な恋愛スタイルは、一族の存続、その地域の村の存続など、他の要因が絡んでいましたので、それとは異なる意味あいだと思います。

女性たちは、貴族の男性たちが、自身の家にやって来るように、さまざまな手段を講じたり、相手に想いを伝えたりしていましたね。
恋愛での、男女のかけ引きは、源氏物語などでも多く描かれてきました。
通い婚、遠距離恋愛、片想い、かけおち、悲恋、不倫など、現代とほぼ同じですね。

今回の「愛の迷走」シリーズを書くにあたって、歴史ブログでもある「歴音fun」ですので、武田信玄と、正室の「三条夫人」、側室で武田勝頼の母である「諏訪御料人(すわごりょうにん)」の、愛の三角関係の話を書こうかどうか迷いましたが、執筆の迷走は止めておきます。
ただ、織田信長にその弱点を突かれて、武田家滅亡の遠因になったのは確かですね。
信玄ほどの武将でも、解決できませんでした…。
さすが「愛の心理戦」上手の信長です。

遠い昔から、ほぼすべての男も、女も、愛とは無縁では生きられないといえますね。
「愛に生きる」かどうかは別としても、一生の中のどこかで、必ず通過する、「愛の扉」です。


◇男性の想像?

今回とりあげます洋楽曲の大半は、実は、男性が作詞作曲したものです。
歌手は全員、女性ですが、作詞は一曲を除いて、すべて男性です。
言ってしまえば、「女心」といいながら、実は男性が、「女心」を想像して、代弁しているということになります。

もちろん、楽曲が完成するまでには、女性陣による歌詞チェックはもちろん、実際に歌う女性シンガーたちの細かなチェックもあったはずです。
女性シンガーたちが、この歌詞ならいいと納得したに違いありません。
ですから、男性のひとりよがりの想像歌詞とは言い切れないとは思います。

とはいえ、私には何か、男性による女性への希望、期待、別の要素が交じっているような気がしてきます。
男性たちから女性を見ると、たしかに「愛に生きている」ように感じる場合も多くありますが、本当に「愛に生きている」のかどうか…?

さらに私は、男性の書く「女心」の歌詞は、なんとなく、女性でも男性でも通用する内容が多いような気もしています。
実は、男性としての本心を、女性という仮面をかぶって描いているといえるのかもしれません。
たしかに、少し恥ずかしい、大胆な愛の表現も、女性の言葉の歌詞なら可能かもしれません。

今回は、数曲だけですが、それぞれ違うタイプの「女心」をとりあげてみました。
そして、女性シンガーたちの中でも、特に個性的な女性たちによる歌唱をとりあげてみました。

マライア・キャリーの楽曲だけは、女性である本人による歌詞ですが、あとはすべて男性がつくった歌詞です。


◇青春の輝き

カーペンターズの1976年のヒット曲ですね。
特に日本人が好む曲で、特に日本では周期的にヒットしますね。
数年くらい前まで、テレビの有名な旅番組で毎回流されていましたので、記憶されている方も多いと思います。
テレビドラマでも使われましたね。

ご存じのように、カーペンターズは、兄のリチャード・カーペンターと、妹のカレン・カーペンターによる音楽ユニットですね。
日本のテレビの歌番組にも結構出ていましたね。

デビュー当時に、音楽評論家の多くから酷評された彼らでしたが、本人たちや、多くの音楽ファンが、その酷評を見事にはね返した典型的な例でしたね。

* * *

妹のカレン・カーペンターは、若くして、拒食症で亡くなってしまいました。
過激なダイエットが拒食症の発端であったといわれています。

今回のコラムでとりあげる楽曲の女性歌手たちは、たまたまみな、大きなコンプレックスを持ち、それを跳ねのけ大成功した方々です。
三人組のスリー・ディグリーズについては、約15人の女性たちが、トップ三人に入るために、常に激しい競争をしていたグループで、トップの三人はよく入れ替わっていましたね。
今の日本の女性アイドルグループの内部競争にも似ています。

* * *

さて、この楽曲「青春の輝き(I Need To Be In Love)」は、カレンが、カーペンターズの曲の中でも、かなりお気に入りの楽曲でした。
ある女性が青春時代を思い出し、でも女として変わらない自身の姿を歌う歌詞ですね。

印象的な歌詞内容がたくさん登場します。

私は知っているのよ…自分には愛が必要ってことを…。
「運命の人」「完璧な人」がどこかにいるって…バカな私はずっと思っているの…。
私の自由奔放こそが、(男性に)「さよなら」を言わせているの…。
たったひとつの希望にしがみついてる自分がいるの…。
代償なしでは、何も得ることはできないのね…。

こんな、かわいい歌詞は、男性からすると、ちょっと笑ってしまいそうになりますが、何とも微笑ましい、乙女心を感じる、愛にあふれる歌詞に感じます。
まさに、邦題の「青春の輝き」を感じさせてくれる内容ですね。
この歌詞を、中低音が魅力的なカレン・カーペンターの声で聴かされると、より感傷的に伝わってきます。

この歌詞は、男性が書いたものですが、実は「女心」と言いながら、男性である自身の思いをつづったと考えられないこともありません。
カーペンターズは、女性にも、男性にも、ファンがたくさんいたのも、よくわかりますね。

* * *

あのテレビの旅番組は、「青春の旅路」だったのか…?
たしかに、「愛」を手にするには、数々の代償が必要な場合も…。

映像には、ドラム演奏をするカレンの姿も…
♪青春の輝き(和訳付き)

 

 


◇ウーマン・イン・ラヴ(1)

楽曲「ウーマン・イン・ラヴ」といえば、1980年に、バーブラ・ストライザンドが大ヒットさせた曲を、まずは思い出します。

この楽曲の作詞作曲は、あのディスコ音楽の帝王「ビージーズ」です。
もちろん、あの男性3人組ですね。
当然、あの女王バーブラ・ストライザンドが歌うのを想定してつくられた歌詞だと思います。

バーブラは、ユダヤ系のロシア人とオーストリア人の血をひいており、苦労の末、トップスターの座を手に入れました。
もともと女優志望だったこともあり、多くのヒット映画に主演していましたね。
持ち前の根性と努力は、音楽活動だけでなく、社会政治活動でも発揮されていました。
昔から、一種の風格を感じる女性でしたね。

そんな彼女が歌う「愛に生きる女」の楽曲の主人公が、弱腰のはずがありません。
自身の生き方が、そのまま愛の表現になっているような歌詞です。

愛を手に入れるためなら何でもする…、すごい歌詞内容です。
この歌の女性ほどの、愛への、とことんまでの執着と持続力は、男性にはないかもしれませんね…?
男性には強烈な歌詞ですが、しびれる楽曲です…。

ウーマン・イン・ラヴの和訳

♪ウーマン・イン・ラヴ

 

 

2013年のバーブラです。
♪ウーマン・イン・ラヴ

 

2019年のバーブラです。
70歳台に入った彼女ですが、女王の風格は、今でも健在。
♪ウーマン・イン・ラヴ ~ ノー・モア・ティアーズ

 

* * *

2006年に、歌手のリズ・マクラーノンがカバーしてヒットした同曲も、当時のなつかしいサウンドや効果音が入っており、楽しめますね。
♪ウーマン・イン・ラヴ

 

 


◇ウーマン・イン・ラヴ(2)

同名の異曲ですが、こちらは女性三人組の「スリー・ディグリーズ」の「ウーマン・イン・ラヴ」(1978年)です。

大まかな歌詞内容は、

愛しの男性は私を愛してくれない…
でも、私は彼につくして、つくして、つくしまくるの…
私のこと普通じゃないと思ってるでしょ…
もし万が一、私のことが必要になったら、私のすべてを捧げるわ…
私はそれでいいの…
あなたのそばにいるわ…

この楽曲…演歌の世界か…。
男性からすると、どうすりゃいいのさ…。
この歌詞も男性が書いたものですが、体験談か、自身の気持ちか…。

ウーマン・イン・ラヴの和訳

* * *

下記映像のスリー・ディグリーズのような衣装を、少し前の時代まで、テレビの歌番組でもよく見かけましたね。
なつかしい気がします。
男性にとっては、この美しいメロディで、歌詞の強烈さが少し和らぐ…?

♪ウーマン・イン・ラヴ

 

 


◇マイ・オール

ここまでの三曲の「女心」の歌詞は、すべて男性が書いたものです。
下記の楽曲「マイ・オール」も、前述のスリー・ディグリーズの「ウーマン・イン・ラヴ」と同じように、一途な女性の想いを描いた歌詞です。

この楽曲の作者名の中に、歌ったマライア・キャリー自身の名が入っていますので、おそらく、歌詞は彼女自身の思いが込められていると思います。

「マイ・オール」の歌詞も、翻訳者次第で、解釈が少し違ってくる気がしますが、下記に女性による和訳をご紹介いたします。
アメーバブログで、洋楽和訳や愛の記事を書かれている「みるん」様のページです。
この度の「みるん」様のご厚意に感謝いたします。

マイ・オールの和訳

 

* * *

前述までの三曲の歌詞内容とは、かなり趣きが違う印象を受けます。
おそらくは、この歌詞を女性が書いたからではないかと、私は感じます。

下記の映像で、裏返しのボートの上のビーナス(マライア)は、遠くの灯台の灯りを見つめるだけ…。
転覆したボートは、灯台を目指すことができません。
一途な女心は、暗い波の上をただ漂うだけ…。

前述の楽曲「ウーマン・イン・ラヴ」のような、強い女性もおられるでしょうが、実は、たいていの女性の一途な「女心」とは、こちらのほうかもしれませんね…。
これも、男性による身勝手な妄想…?

強さの反面、少し か弱い部分を感じさせる女性歌手のマライア・キャリーの大ヒット曲です。

♪マイ・オール

 

 

♪マイ・オール(ライブ)

 

 


◇男性から男性へのソフト忠告

ここまでは「女心」の歌でしたが、最後は、ちょっと変わった歌詞の楽曲を…。

男性が男性に「女性には愛が必要なんだよ。ちゃんと応えてあげなよ…」と忠告するという歌詞内容の楽曲です。

大まかな歌詞内容は、

男性がそうであるように、女性にも愛が必要な時があるよ…
お前さんが浮気をするように、彼女だって浮気はできるのさ…
お前さんは浮気はやめとけ…
彼女の愛にしっかり応えておくことさ…

そんなような歌詞内容ですね。
とはいえ、かなりソフトな忠告です。

忠告が、はたして届いたのかどうか…。
一番 手放してはいけない女性の手を、しっかり握っていたのかどうか…。

女性たちはみな、男性のことをお見通し…、そんな女子会トークをたまたま耳にした男性が書いた、小気味いい歌詞です。

世の中、こういうアドバイスができる男性ばかりなら、平和なのですが…。

♪ウーマン・ニーズ・ラヴ

 

 

* * *

いずれにしても、大なり小なり、居心地がよかろうが 悪かろうが、相思相愛だろうが 一方通行だろうが、女性も、男性も、ジェンダーも、人間である限り「愛」の中で生きているということなのかもしれませんね…。

手放したくないもの…、手放してはいけないもの…。
そうそう漂流したくはありません…。

「愛の灯り」がしっかり灯ってこその灯台…。
皆さまの灯台、しっかり灯っていますか…。

* * *

次回のコラムは、「愛の迷走」の第2回として、シャーリーンのあの超大ヒット曲「愛はかげろうのように」をとりあげます。

世代や年齢に関係なく、どの時代でも、女性に大歓迎される、この楽曲ですね。

男性がむやみに入り込めない、女性の音楽世界のことを書きます。


コラム「音路(42)手にするのも、手放すのも、あなた…」につづく

 

2021.7.15 天乃みそ汁

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