ハンス・ジマーさんの世界。戻って来たべートーヴェン。狂気のパガニーニ。オーケストラの映画。パイレーツ・オブ・カリビアン。バットマンとダークナイト。ワンダーウーマン1984。グラディエーター。2 CELLOS。デイヴィッド・ギャレットさん。キャロライン・キャンベルさん。ジョー・ブランケンブルグさん。

 

にほんブログ村 音楽ブログ 洋楽へ 

 

各コラムで紹介した曲目リストは、「目次」で…

  

あの曲や動画はどこ… 音楽家別作品

 

*今後の予定曲

 

音路(10) パイレーツ・オブ・ミュージック

 


◇時代の独特な重厚音楽

前回コラム「音路(9)ミュージシャン・オブ・麒麟がくる」では、NHK大河ドラマ「麒麟がくる」のメインテーマ曲について、多くのミュージシャン方の演奏動画をご紹介しながら、書きました。

その中で、私は、そのメインテーマ曲について、「この手の重厚音楽」と書きました。
この十数年の映画やドラマで流行している、重厚で骨太な、独特な戦闘イメージのサウンドです。
どんどん深く、太く、厚く、重くなっていくようにも感じます。

個人的なイメージとして、私には「この手」と呼びたい音楽スタイルです。
私も相当に好きなスタイルです。

言葉では説明しにくいのですが、代表的には、映画「パイレーツ・オブ・カリビアン」に登場してくるような壮大で重厚、暗さや戦闘をイメージさせる、猛烈な迫力を持った音楽です。
特に重低音は効果的ですね。

* * *

私は、この「麒麟がくる」のメインテーマ曲を初めて耳にしたとき、「いよいよ、大河にもこの手の重厚音楽がやって来たか」と一瞬、感じました。
「重厚がくる」…。

そして、映画「パイレーツ・オブ・カリビアン」の一連の楽曲と映像のイメージが、頭の中に浮かんできました。
今回のコラム「音路(おんろ)10」では、このような今の時代の重厚音楽を、少しだけご紹介したいと思います。


◇ハンス・ジマーさんの世界

まずは、その映画「パイレーツ・オブ・カリビアン」の一連の楽曲を作曲した「ハンス・ジマー」さんです。

ドイツ出身の男性で、今年2021年で64歳です。
若い頃に英国に渡り、その後、米国に渡ります。
今や、ハリウッドの映画サウンドの中心的な存在ですね。

彼は、作曲家であるばかりでなく、キーボード奏者でもあり、1979年の世界的な大ヒット曲「ラジオスターの悲劇」で知られるバグルスのバックミュージシャンもしていたようです。

* * *

彼が音楽家として関わった、有名な映画作品を一部だけ…

◎パイレーツ・オブ・カリビアンのシリーズ
◎グラディエーター
◎ライオンキング
◎クリンゾン・タイド
◎ザ・ロック
◎ラストサムライ
◎ブラックレイン
◎バックドラフト
◎レインマン
◎ドライビング・ミス・デイジー
◎デイズ・オブ・サンダー
◎グリーンカード
◎クールランニング
◎恋愛小説家
◎ミッション・インポッシブル2
◎サンダーバード
◎ダ・ビンチ・コード
◎ダークナイトのシリーズ
◎シャーロック・ホームズ
◎インセプション
◎ラッシュ
◎ダンケルク
◎シン・レッド・ライン
◎ワンダーウーマン1984
◎007ノー・タイム・トゥ・ダイ

ほかにも、ラストエンペラー、フェイスオフ、アイアンマン、アニメのウォレスとグルミット、ミニオン、おさるのジョージなども彼が手がけています。

どの映画も、すぐに音楽が頭に浮かんでくるようなものばかりですね。
彼の音楽が、映画に絶大なチカラを与えたのは間違いないと感じます。

「ラストサムライ」や「ブラックレイン」など、日本に関りのある作品もありますね。
戦争ものの映画作品も多くあります。

ロック、ポップス、クラシック音楽が、彼の中で融合しているように感じます。
そして、ドイツ、英国、米国、それぞれの国が持つ何かも、融合しているのかもしれません。
彼の音楽が持つ、独特で重厚な雰囲気や、エネルギーの強さは、なかなかライバルを寄せ付けないかもしれません。


◇重厚な暗さ「ダークナイト」

「麒麟がくる」のメインテーマ曲は、ダークナイトのシリーズにも通じる世界観を感じます。

私は、「麒麟がくる」にも、映画「ダークナイト」シリーズのような映像内容を期待してしまいましたが、やはり予算や人員のケタが違いますよね…。
それでも、「麒麟がくる」の多くの演出には、これまでの大河ドラマにはない、多くの挑戦を感じました。

* * *

映画「ダークナイト」のシリーズには「バットマン」が登場します。
クリスファー・ノーランさんが作った、2005年からの「ダークナイト」シリーズは、1989年からのティム・バートンさんがつくった「バットマン」シリーズとは、まったく違う映像世界で、同じヒーローでも、まったく別の映画ですね。
1960年代とも全く違うバットマンです。

2000年代以降のバットマンの映画シリーズ「ダークナイト・トリロジー」は、あきらかに、ハンス・ジマーさんの音楽が支えたといっていいのかもしれません。
明らかに、時代が、世代が、音楽が変わったのです。
この暗さと重さは、今の時代を反映しているのであろうかとも感じてしまいます。
80年代、90年代のそれとは、何かが違う気がします。

折しも、映画の「007」シリーズも、同じような方向に舵(かじ)をきりました。
他の一部の映画の傾向も、当然、その方向に向かいましたね。

映画ばかりでなく、そのサントラ音楽も、その方向に向かったということかもしれませんね。

* * *

今の地球は、世界全体がコロナという暗黒に包まれています。
また何か、新しい方向に突き進むのは間違いない気がしています。
以前に戻るのではなく、新しい道を探し始める時代に突入するのかもしれません。

暗黒とヒーローの両面を持つバットマンは、各時代が必要とした時に、その時代にあわせた姿となって、私たちの前に再び姿をあらわすのかもしれませんね。

* * *

下記に、映画「ダークナイト」の映画音楽をご紹介します。
「麒麟がくる」の明智光秀(演:長谷川博己さん)の顔を思い浮かべながら聴くと、そこに壮絶な戦国乱世が登場しそうです。

♪「ダークナイト」メインテーマ曲

 

ハンス・ジマーさんは、間違いなく音楽の歴史に、その名が刻まれるように感じます。
ネット上でも、彼の多くの作品を聴くことができます。


◇ワンダー・ウーマン

ここで、ちょっと面白い動画をご紹介します。

ハンス・ジマーさんが、音楽で関わった映画「ワンダーウーマン1984」(時代は1984年の設定ですが、映画公開は2020年です)があります。
彼の自宅スタジオなのか知りませんが、彼と仲間たちが楽しそうに、その曲を演奏しています。

昔からの楽器から、新時代の電子楽器まで登場してきます。
新旧、ジャンルを越えた楽器の壮大な融合です。

いつか、多くのクラシック音楽のオーケストラの衣装も、皆お揃いではなく、このような姿になっていくのかもしれませんね。
聴かせて、魅せて、度肝抜かせる…。

ミュージシャンというのは、ジャンルを問わず、時に、人に自身の姿を作品として見せるとなった瞬間に、身体の中に、別の何かが覚醒することがあります。
これからの時代、オーケストラ団員を、ちょっと楽しみにしています。

♪ワンダー・ウーマン1984

 

この音楽が、映像と結びつくと下記のようなかたちになります。
いかに音楽が、映像を一段高い領域に導くのかがよくわかります。
すさまじい彼の音楽のチカラですね。

♪「ワンダー・ウーマン1984」映像

 

私は、近い将来、男性ではなく、「ワンダーウーマン」たちが今の世界を一変させるような気がしてなりません。
男性どうしの戦い方ではない、女性の戦い方があるのだろうと感じます。


この「ワンダーウーマン」シリーズは、ハンス・ジマーがやって来て、何か覚醒するかもしれません。
個人的には、今後のシリーズ展開を楽しみにしています。


◇パイレーツ・オブ・カリビアン

下記に、ハンス・ジマーさんの楽曲「パイレーツ・オブ・カリビアン」をテーマにしたコンサート映像をご紹介します。
日本的に言う「クラシック・コンサート」と呼んでいいのかどうかはわかりません。

ですが、指揮者とオーケストラが、そこにいるのは間違いありません。
なんとそこに、アコーディオン奏者も、ジャック・スパロウ(映画 演:ジョニー・デップ)も、途中で登場します。
時代を越えた新旧の楽器群がそこにあります。
途中で映画のシーンも登場します。
さまざまな音楽ジャンルのあいだに、境界をつくってはいけないということが、よくわかりますね。

♪「ハンス・ジマーの世界」コンサート

 


◇2チェロズの「グラディエーター」

もう一曲、ハンス・ジマーさんの楽曲を演奏したコンサート映像をご紹介します。
これは、映画「グラディエーター」の中の楽曲で、「ナウ・ウィ・アー・フリー」です。

「グラディエーター」とは、古代ローマの剣闘士、その他に討論会などでの強力な論客を意味します。

* * *

「2 CELLOS (トゥー・チェロズ)」という二人のチェロ奏者のデュオの演奏です。
彼らは、もはや、押しも押されぬ世界的な人気デュオですが、何か、日本ではまだまだ知られていないのかもしれません。

この二人は、幼い頃からクラシック音楽を学び、猛烈なライバル関係でしのぎを削っていたそうです。
この二人を結び付けて、デュオに仕立てた人物もすごいものです。
一躍、チェロ奏者が、音楽界の大スターの仲間入りです。

チェロ奏者が、ひとりの名歌手、エレキギターの人気プレイヤー、有名ピアニストにも負けない存在であることが証明されましたね。
オーケストラの中に、実は、地味な引き立て役の楽器などいないということですね。

日本にも、クラシック音楽界の中に、「スターの卵」がたくさんいる気がします。

♪ナウ・ウィ・アー・フリー

 

ハンス・ジマーさんの音楽のチカラで、忘れかけていた古い映画の感動が、よみがえってきます。
下記は映画「グラディエーター」の映像付きです。

♪映画「グラディエーター」

 


◇デイヴィッド・ギャレットさん

近年の、クラシック上がりの、世界的大スターとして、私がすぐに頭に浮かんだのが、バイオリニストのデイヴィッド・ギャレットさんです。

彼は、作曲家パガニーニを描いた映画「パガニーニ・愛と狂気のバオリニスト」で、主演および演奏シーンを行った方ですね。
その演奏により、一躍、世界のトップスターとなりましたね。

映画「パガニーニ愛と狂気のヴァイオリニスト」予告編

 

パガニーニは、奇人か変人かどうかは別として、まさに織田信長や明智光秀のように、人並み外れた天才肌で、孤高の特別な人物でしたね。
ほとんどの自身の楽譜を燃やして世を去りました。
歴史から自身を消そうとした作曲家です。

今回は、その映画の楽曲「ラ・カンパネラ」ではなく、下記の2曲を…。

♪バイオリンソナタ 12番(パガニーニ作曲)

 

♪チャールダッシュ(モンティ作曲)・楽譜付き

 


◇キャロライン・キャンベルさん

魅せるバイオリニストのキャロライン・キャンベルさんも、すごい…。
まさに、聴かせる、魅せる、バイオリニストですね。

♪映画「007 スカイフォール」演奏

 

「スカイフォール」とは、映画の主人公のジェームズ・ボンドが幼い頃に住んだ家の名称です。
歌手アデルさんの大ヒット曲ですね。

* * *

2 CELLOS (トゥー・チェロズ)のお二人も、デイヴィッドさんも、キャロラインさんも、オーケストラでの正装の姿と、ロックスターのような姿の両方を見せてくれる音楽家です。
演奏の実力はもちろん、音楽家として演奏とは別の側面をしっかり見せてくれますね。
四人とも、もはや、クラシックの演奏家の域をとっくに越えています。


◇ジョー・ブランケンブルクさん

さて次は、ハンス・ジマ―さんの重厚音楽に似たサウンドで、私もお気に入りの音楽家ジョー・ブランケンブルクさんです。
彼も、ドイツ出身です。
ハンス・ジマーさんといい、このジョーさんといい、ドイツの音楽の底力は、ものすごいですね。
彼も、映像と組み合わせた音楽のかたちが多く、素晴らしい作品のオンパレードです。
実は、私は、仕事のBGMとして聴いていることも多い音楽家です。

「CRONOS」というアルバム作品があり、その中の多くの楽曲をハイライトでつなぎ合わせた動画が、下記のものです。
まさに戦闘態勢のオーケストラ演奏です。
それぞれの楽器が、まさに戦闘の武器のように見えてきます。

♪CRONOS

 


◇戻って来た ベートーヴェン

下記にもうひとつ、重厚サウンドをご紹介します。
またまたドイツ人の楽曲です。

あの、ベートーヴェンです。

ベートーヴェンの多くの楽曲は、それでなくとも壮大なチカラがありますが、この楽曲らが、今の「重厚たち」にかかるとこうなります。
もし、ベートーヴェンが今の時代に生きていたら、ひょっとしたら、このようなタイプの音楽に仕上げたかもしれません。

ベートーヴェンは、自身の内にある、すさまじいエネルギーの発散を理想としていたかもしれませんので、今の令和の時代なら、こうした音楽手法を選んだかもしれません。

この音楽作品は、「Hidden Citizens」という、アンダーグラウンドのクリエイターたちのグループの制作だそうですが、詳しくは知りません。
ひょっとしたら音楽関係者ではないクリエイターも入っているのかもしれません。

♪聴いたことのないベートーヴェン

 


◇海賊たち

このような重厚音楽作品を聴いてくると、音楽には、実はジャンルの境界はなく、国境はなく、世代間格差はなく、まさに自由そのものだと感じさせてくれます。
あるのは人間の時代感覚だけなのかもしれません。

「翼がはえた生きもの」のように、音楽は、想像を超えた進化をしていくのかもしれませんね。

* * *

ハンス・ジマーさんの音楽には、クラシック音楽の匂いも、ロックの匂いもします。

1970年代に、「プログレッシブ・ロック」という、やはりロックとクラシック音楽が融合した音楽スタイルが世界を席捲しました。
ピンク・フロイド、エマーソン・レイク&パーマー、イエス、キング・クリムゾン、ジェネシスを代表格に多くの人気グループがいましたね。

その中には、クラシック界や美術界からやって来たロック・ミュージシャンが多数いました。
現代は、そこまでの席捲域には達していませんが、何かの融合が再び起きかけているのかもしれません。

ハンス・ジマーさん…おそらく1970年代でしたら、どこかの「プログレ」のバンドメンバーになっていた気がします。

* * *

今回ご紹介した音楽や演奏者たちは、大海原にある、音楽ジャンルという無数の小島を、船でかけ巡る存在なのかもしれません。
まさに「パイレーツ(海賊)」のように、夢と希望と野心をたずさえ、猛然と大波の中を突き進む戦士なのかもしれません。

前述しました、狂気の作曲家パガニーニは、1840年に亡くなった音楽家ですが、その肖像画を見ても、まさに海賊のようなお顔…。
ベートーヴェンの肖像画も、すでに海賊の親玉の雰囲気たっぷり…。
いつの時代も、次の時代は「パイレーツ(海賊)」たちが、道を開くのかもしれません。

「海図」など頼らず、その身の才能ひとつで大海に漕ぎ出す戦士…。

音楽界のパイレーツたち…、今、私たちのすぐ近くにも、じっと潜んでいるのかもしれません。


◇次の世代へ

最後に、オーケストラなどを描いた外国映画を少しだけご紹介します。
よろしかったら、一度見てみてください。

「オーケストラ・クラス」予告編

 

 

音楽の先生たちは、みなたいへん…。

音楽教育現場の理想と現実…、でもそこは音楽のチカラ。
「オーケストラ・クラス」の一部

 

「ストリート・オーケストラ」予告編

 

「オーケストラ」予告編

 

「オーケストラの向こう側」予告編

 

* * *

コラム「音路(11)Between… 間が大事」につづく

 

2021.1.24 天乃みそ汁

Copyright © KEROKEROnet.Co.,Ltd, All rights reserved.

 

にほんブログ村 音楽ブログ 洋楽へ 

 

各コラムで紹介した曲目リストは、「目次」で…

  

あの曲や動画はどこ… 音楽家別作品

 

*今後の予定曲