ある寒村のドラゴン退治#9 ◇535年 12の月 勇者一行のドラゴン退治 下巻 | 白鴉(shiroa)のビバラムービー

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勇者はドラゴンを倒せるか?! いざ決戦です。

 

しろあです。

 

前回はこちら。

準備は整った。さぁ、ドラゴンとの勝負、結果やいかに?!

 

ではどうぞ。

 

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◇535年 12の月 勇者一行のドラゴン退治 下巻

片手剣の戦士はゆっくりとドラゴンに近づく。
ある距離で目を開けたドラゴンに瞬時立ち止まったが、さらにじりじりと近づく。
一匹のドラゴンが片足を立て、首をもたげた。
無表情で戦士を見つめる。
戦士はさらに距離を詰める。これは剣で切り裂くことを目的としたものではない。
飽くまで気を引くためであり、あわよくば油をかける為である。

ドラゴンが舌を出し、シャーッという音を発して威嚇した。
しかし戦士はひるまずにさらに近づく。
するとドラゴンは立ち上がった。もう一匹のドラゴンはその場で目だけ開けてくるまっている。
その巨躯に戦士の足はすくんだ。逃げ出そうかと思ったが、盾を前にしてじりじりと距離を詰める。
と、ドラゴンは頭を下げ、四つん這いになると頭から戦士に突っ込んできた。
戦士は慌ててドラゴンに正対しながら後ろに下がるが、思った以上に早いドラゴンの動きに弾き飛ばされた。

戦士は地面を転げたが、はじかれた力を利用して転がりながら遠ざかる。
首をもたげ戦士へ近づくドラゴン。
そこへ軽業師が石を結び付けた紐を投げつけ、ドラゴンの首元に絡めた。
化学術師が罠を発動させると、ドラゴンを地面に縛り付けるのに成功した。
幸運にももう一匹のドラゴンは目を開いたまま微動だにせずこちらを静観している。
今が好機と、戦士と軽業師はドラゴンに近づき油入りの布袋を投げつけた。

油をかけることに成功したが、ドラゴンは罠の紐をもろともせずに立ち上がると、
鋭い爪で軽業師を引き裂いた。鮮血が飛び散り、軽業師はその場に倒れた。
討伐に赴いた一行は恐怖に捉われた。
戦士が十分に安全な場所に逃げる前に、狩人は火矢を放ってしまう。
その火はドラゴンの表面の油に引火したが、その火はすぐに戦士の体に移った。
戦士はのたうちまわり苦しむ。しかし誰も彼を助けにいくことはできなかった。

ドラゴンの表面の火はすぐに地面に落ちた。どうやら油を弾いたらしい。
ドラゴンは戦士の頭を無慈悲にも踏みつけた。戦士の体は痙攣し、やがて動かなくなった。

弓使いと狩人は遠方より火矢を放ったが、どれもドラゴンの鱗を突き破ることはなかった。
弓使いは目を狙うが、恐怖に腕は震え、正確な射的はできなかった。
ドラゴンは次に近くにいた化学術師の傍へ距離を詰める。
逃げられないと悟った化学術師は電気棒を用いて応戦した。
しかし人間ならば大男でも瞬間で体の動きを封じる電気棒だが、ドラゴンには効かなかった。
ドラゴンは鋭い牙で肩に嚙みつくと、振り回して遠投した。
化学術師は岩にぶつけられ、その衝撃で動けなくなった。

恐怖した弓使いと狩人たちは、火矢が無くなってもあらん限りの矢を放つ。
それに苛立ったのか、ドラゴンは大きく息を吸い込むと、ケェェェンというような怪音波を放った。
ドラゴンに比較的近かったものは、耳から血を流して倒れた。
それ以外の者は耳がキーンという音をたて、一切の音がわからなくなった。

残念ながらこの戦いの記録はここまでである。
生存者は弓使いと狩人2名。
化学術師は助け出したときにはまだ息があったが、内臓を痛めており数日後に死んだ。
弓使いは鼓膜が破れ、耳が聞こえなくなった。
幸いその後ろにいた2人の狩人は翌日耳が聞こえるようになり、
村長はじめ村の顔役へ事の次第を報告した。

弓使いは使命を果たせなかったことを詫び、報酬を辞退すると村を去った。
この戦役での死者は村で丁重に葬られた。

――残念ながら、この年も年越しの祭りは中止されることとなった。