人間万事塞翁が馬(随筆)【31】とうとう仏罰が下る | 遊行聖の寺社巡り三昧                            Yugyohijiri no Jishameguri Zanmai

先日ご報告しましたが、本年上半期を飾る滋賀・京都遊行で最も感銘を受けたご尊格は、東寺観智院の五大虚空蔵菩薩と滋賀向源寺の国宝十一面観音であると思います。

五大虚空蔵菩薩に関して言えば、ご尊像はもちろん腰が抜けるほど感動したのですが、授与頂いた「五大虚空蔵菩薩御影」も額に入れて飾ってしまうほどの出来映えでした。

そして向源寺の十一面観音に関して言えば、当然国宝に指定されなければならない優雅な美しさにすっかり魅了されてしまいました。

そんな余韻の冷めやらぬ昨日、向源寺の渡岸寺観音堂で頂いた国宝十一面観音のポスターをリビングに飾るべく、椅子の上に立って壁へのピン留めを始めました。

すると土台にしたキャスター付きの椅子が反動で動いて、ほぼ1mの高さで宙を舞い、直接腰からフローリングに転落してしまいました。

もちろんキャスターが滑ることは椅子に乗る前から警戒していましたし、壁に対してピンを押す作用に対して反作用が発生することなどわかり切っていました。

ところが、わかっていながら転落したのです。

これはお年を召された方なら経験もおありかと思いますが、『脳から発する指令に身体が追いつけない症候群』と言う老化の初期症状ではないかと思います。

腰を痛打した私はしばらく動くことも出来ず、恨めし気に壁の十一面観音を見上げるうちに、これは鎌倉長谷寺十一面観音の仏罰ではないかと考え始めました。

先週、6月29日(土)、御霊神社のウッシー宮司が描かれた月替わり御朱印を頂くため、私と美月は鎌倉の長谷を訪れました。

ここまでは良かったのですが、坂東三十三観音で御影を頂き忘れた長谷寺へも参詣することを思い立ちました。

もう紫陽花の季節は終わりを迎えており、長谷寺を平日訪れた知人からも「もう空いていましたよ」とお墨付きをもらっていたのです。

ところが鎌倉駅は江ノ電に乗り切れないほどの観光客が溢れ、長谷寺も人気がある紫陽花路の通行が今月いっぱいとあって列を作るほどの混雑になっていました。

経堂のところから見上げると、狭い幅の石段である紫陽花路は、由比ガ浜と紫陽花を撮影する人々で身動きがとれない状況になっていました。

『スラムダンク』で有名な踏切にしても、そこまで他人と同じ景色を撮らなければ満足出来ないのでしょうか?

前にも書きましたが、自分の『近江八景』や『金沢八景』をつくればいいのに、誰かがオーソライズした景色を我も我もと「いいね」を押さなくても良いと思うのです。

私と美月は付和雷同な人々を大笑いしました。

おそらくその呵々大笑を長谷寺の十一面観音が聞き咎めて、今回の仏罰を下したのかもしれません。

「邪鬼のくせに自惚れるではない」

渡岸寺観音堂で拝した十一面観音後頭部の暴悪大笑面が、椅子から落下する刹那、大笑いしているのを見たような気がしてきました。