妄想の座敷牢リメイク(一)『プリン』筆者覚え書き | 遊行聖の寺社巡り三昧                            Yugyohijiri no Jishameguri Zanmai

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元三慈恵大師(角・鬼・豆)関連グッズと良源研究、オモシロ絵馬、仏像鑑賞、日蓮大聖人像、一遍上人像、キリスト看板、自作官能小説、随筆等々、蒐集したコレクションを常設展示します。当ブログは『豆々朗師のオモシロ寺社巡り』のリメイク版になります。

『プリン』は、2008年、社団法人日本動物保護管理協会が主催する『日本動物児童文学賞』で大賞を獲得した作品です。

同年9月20日(日)、偶然ですが私が根城とする上野公園の噴水広場で表彰式があり、環境省のお役人から賞状と副賞30万円を頂戴したのを覚えています。

もちろん賞金30万円は魅力でしたが、当日、池之端のおでん屋『多古久』の女将がカサブランカの花束を用意して待っていてくれたことが今も忘れられません。

会社人生を除けば、これが私の最も晴れがましい一日であったかと思います。

競馬好きな方ならご存知でしょうが、プリンのモチーフは実在したハードバージと言う皐月賞馬(1977年)で、その悲劇は作品後段で再現している通りです。

私はこの史実を風化させないため、敢えて日本動物保護管理協会が公募する児童文学賞に作品をぶつけることにしたのです。

製本化した優秀作品は全国小学校の図書館に寄贈されるのですが、競馬を題材にした内容がまさか大賞を取るとは私自身想像もしていませんでした。

お役所もなかなか粋なことをしてくれます。

そもそも我々は椋鳩十(むく はとじゅう)の動物文学で育った世代であり、彼が山窩小説を書いていたことも私とは無縁ではないと思っています。

しかしこの『プリン』への愛着が強過ぎて、絵空事の童話チックな作品を書く意欲は失せ、私にとって最初で最後の児童文学作品になってしまいました。

この作品を書くにあたっては、寒風吹きすさぶ中山競馬場へ出かけて、実際にハードバージが皐月賞で勝った優勝レイを展示場で見て涙を流しました。

また牧場で働いた経験が無いので、その辺りの描写は資料から勝手に妄想したものであることをお断りしておきます。

作中の挿絵は、まだ中学生だった私の次男に小遣いを渡して描かせたものです。

大賞の内示があってから、製本するのに挿絵を三枚描いて送るように言われて、絵心が無い私は漫画を描くのが好きだった次男に頼むしか伝手もありませんでした。

先日、孫を連れて遊びに来た次男が、単身赴任中に子供に絵本を描いたと言う話を聞き、『プリン』の挿絵を描いた経験が生きていたのかと嬉しく感じました。

しばらく経って、美月と千葉県九十九里浜のサンシャイン・フアームで乗馬を始めたのもプリンのことが心に残っていたからだと思います。

プリンのおかげで、肌を通じて馬の愛らしさを知ることが出来ました。

寺社巡りを始めた現在も、路傍に苔むす馬頭観音の石像を見る度にプリンを思い出して手を合わせています。

プリンは私の人生を斯くも豊かにしてくれました。

心から冥福を祈ると共に、「ありがとう」と感謝の言葉を空に届け続けたいと思っています。

最後に、ハードバージの雄姿です。

ご愛読いただき有難うございました。