元三大師関連寺院(一)【8】東頭山 行元寺(千葉県いすみ市)No.1 | 遊行聖の寺社巡り三昧                            Yugyohijiri no Jishameguri Zanmai

久しぶりの元三大師関連寺院になります。

先日ご紹介した大悲山笠森観音に近い房総半島の中央部、いすみ鉄道の上総中川という無人駅から30分ぐらい歩いたところに東頭山行元寺(ぎょうがんじ)は位置しています。

初めて美月と行元寺を参詣したのは2014年6月8日でした。

真っ赤なスカイラインで房総の山道を走り回っていた頃で、あれから既に10年が経つのかと思うと感慨深いものがあります。

路傍で見つけた馬頭観音に往時の面影を偲ぶなど、現在の寺社・仏像巡りを始める素養はこの頃に培われたのかもしれません。

さて行元寺です。

全国的には知られていませんが、この寺院には房総半島で有名な「波の伊八」が彫った『波に宝珠』という欄間が残されています。

(行元寺ホームページより)

これが葛飾北斎の『富嶽三十六景 神奈川沖波裏』に似ていると言うことで、観光バスが停車出来る駐車場がこの寺院にはあります。

「波の伊八こと、武志伊八郎信由(たけしいはちろうのぶよし)は1752年(宝暦2年)に、現在の鴨川市打墨で生まれました。 子どもの頃から手先が器用であったようで、彫刻師である嶋村貞亮に弟子入りをし、腕を磨き、安房・上総をはじめ、江戸や相模など、南関東を中心に50点余りの彫刻を残しています。 伊八は若いころから才能を発揮し、次第にその腕を買われ、数多くの仕事をこなしていきますが、別名「波の伊八」と呼ばれるように、大小に関わらず多くの波を彫っています。 彼の彫る彫刻は、立体感や奥行きがあり非常に優れていますが、特に波は躍動感に満ちています」。

(いすみ市観光ポータルサイトより)

確かに構図は似ているのですが、二人に関係性はないようで、この行元寺の看板はちょっとやりすぎではないかと苦笑してしまいました。

どうやら行元寺の住職が元美術関係者らしく、このような宣伝手法を用いて団体参拝者を集めているようです。

しかし北斎とは全く違います。

後から描かれた北斎の絵が似ているから伊八は凄いという考え方自体が、実は伊八の作品を貶めてしまっているようにしか思えてなりません。

伊八は伊八、北斎は北斎。

有名な何かに似ているとか、これが何かの原点とか、権威づけしようと焦れば焦るほど本当の価値を棄損することになってしまいます。

私と美月は千葉県長生郡にある月讀神社を訪れた際、それは集落にある本当に小さな神社なのですが、向拝に設えられた龍の宮彫りの見事さに感動したことがあります。

私と美月は当時全く知識も無かったのですが、その迫力に圧倒されて二人でため息をついたのを覚えています。

伊八は芸術家と言うより当時の宮大工であり、本人達は工務店の仕事としてこれらの彫刻を造っていたと考えています。

伊八工務店は五代目まで続き、月讀神社の龍は三代目が彫ったものだと言われています。