人間万事塞翁が馬(随筆)【8】愛猫『慈恵(じえ)』の捕物帖 | 遊行聖の寺社巡り三昧                            Yugyohijiri no Jishameguri Zanmai

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元三慈恵大師(角・鬼・豆)関連グッズと良源研究、オモシロ絵馬、仏像鑑賞、日蓮大聖人像、一遍上人像、キリスト看板、自作官能小説、随筆等々、蒐集したコレクションを常設展示します。当ブログは『豆々朗師のオモシロ寺社巡り』のリメイク版になります。

2023年11月30日、朝起きてリビングのシャッターを上げようとした時、愛猫『慈恵』が窓の隙間からもの凄い勢いで庭へ飛び出しました。

庭に『豆ちゃん』がいたのです。

『豆ちゃん』は昨年から我が家にエサを貰いに来る野良猫で、決して人には馴れないのですが、可哀想なので時々庭先にエサを置いてやっていました。

『慈恵』を室内で飼い始めて一年、窓ガラス越しに何度か『豆ちゃん』といがみ合うことはありましたが、今まで一度も外へ出たがることがなくすっかり油断していました。

7年飼った先代猫『ルナ』が失踪した後、夜な夜な町内を捜し歩く私を気の毒に思ったお隣さんが保護猫団体へ連絡して譲渡して貰ったのが『慈恵』です。

元々が野良猫で子供と共に保護された『慈恵』は、子猫を思うあまりに先住猫と折り合いが悪く、保護猫団体のFさんが一匹飼いしてくれる飼い主を捜していたそうです。

そんな『慈恵』ですから、警戒心が強く、おそらく一年経った今でも完全には心を許してくれていないと思います。

さて、家から逃走した『慈恵』は、しばらく『豆ちゃん』を追いかけていましたが、逃げられてしまうとお隣さんの庭でウロウロし始めました。

『慈恵』が我が家へ来ることになった張本人のお隣さんに事情を話して庭に入れて頂きましたが、近づこうとしても野良猫のように逃げるばかりです。

ご近所を巻き込んでの大騒動です。

保護猫団体のFさんに相談すると、夕方に捕獲器を持って来てくれるとのことで、それまで窓を開放してエサでおびき寄せないと指示されました。

信頼関係の無さに絶望しつつ、行方知れずとなってしまった『ルナ』への反省もあり、家の前を車が通るたびに心配で窓の外を眺める有様でした。

ところが昼過ぎ、恐る恐る警戒しながら『慈恵』が開け放った窓からそっと顔を覗かせたのです。

「ふざけるな!」と怒りたい気持ちは山々でしたが、知らん顔をしていると、家の中でエサを食べ始めたので背後に回って窓を閉めることが出来ました。

とりあえず安堵しましたが、この後が大変で、ご近所にお騒がせした謝罪と無事帰って来たことを報告して回らなければなりませんでした。

当の『慈恵』は走り回って疲れたのか、いつものように日の当たる窓辺で爆睡です。

「クソ猫め」と怒りながらも、自ら家に戻って来たのですから、少しは居心地が良くて飼い主を信頼してくれているのかと嬉しく思いました。