オモシロ絵馬(一)【2】日圓山 妙法寺(東京都杉並区堀ノ内)No.1 | 遊行聖の寺社巡り三昧                            Yugyohijiri no Jishameguri Zanmai

若い頃から古典落語が好きで、古今亭志ん生や志ん朝の落語カセットテープを良く聴いていました。

残念ながら生で聴くことは叶わず、今は数少ないYouTube動画を楽しみにしいます。

『人間万事塞翁が馬(随筆)【6】伊集院静氏の訃報に接して』で書きましたが、かつて常連だった上野池之端のおでん屋『多古久』には志ん生の定席がありました。

これは上野鈴本演芸場から近かったからで、今は廃業してしまった近くの『池之端藪蕎麦』にも多くの落語家が通っていました。

(古今亭志ん生が句会で描いた火炎太鼓を観ることが出来ました)

カウンターの奥まった端の席で、通い出した頃は畏れ多くて座れなかったのですが、或る日女将から「そこに座んなさい」と言われた感激は今も忘れられません。

好きになるとそこまで好きなのです。

さて、その話は一旦忘れて頂いて、『合掌の証』という日蓮寺スタンプラリーに熱中していた頃、丸ノ内線新高円寺駅にある日蓮宗57本山の一つ妙法寺を訪ねました。

当時は日蓮宗六老僧(日蓮大聖人直弟子の六高僧)の一人、日朗上人を研究しており、所縁の大田区池上本門寺や鎌倉比企谷妙本寺、松戸市本土寺などを良く訪ねていました。

日蓮大聖人が伊豆に流罪された際、師を偲んで日朗上人が彫った大聖人彫像があることを知り、不案内な東京西部の妙法寺まで足を延ばしたのです。

柴又帝釈天(経栄山題経寺)にも似た雰囲気がある庶民に開かれた寺院で、本山ではあるものの親しみを第一印象に抱きました。

さて、再び古典落語の話に戻りますが、古今亭志ん朝の演目に『堀之内』という噺があるのですが、これが粗忽者の抱腹絶倒噺で『火炎太鼓』より面白いと思っています。

(ただ熟考すると、私と同じ極度の近視者をネタにしていると気づきますが・・)

その『堀之内』の舞台となっているのが妙法寺で、昔から『厄除のお祖師様(おそっさま)』として庶民の信仰を集めていたようです。

残念ながら日朗上人が彫刻した日蓮大聖人像を見ることは出来ませんでしたが、祖師堂を始めとして歴史ある伽藍に感動しました。

中でも、祖師堂の正面を飾るこの「龍三体の図」は鬼気迫る臨場感があります。

お察しの通り、これは以前に紹介した武志伊八郎信由(通称:波の伊八)の手による彫刻のようです。

日蓮宗、古典落語、波の伊八・・ここまで縁があると、辿り着くべくして辿り着いた寺院ではないかと感慨深く参詣させて頂きました。

そして私はここで蒐集を始めるきっかけとなった絵馬と出逢うことになるのです。