息子の高校生活が始まった。
肝機能障害で抗がん剤を中断して、体調は回復してきた。食欲はあまり無いが、朝起きられるようになってきた。
が、入学式の日。
午後からの式なので、朝具合が悪い息子でも大丈夫だろうと思っていた。高校に着いて玄関から入ろうとすると
「ちょっと待って。具合悪い…」息子がつぶやいた。立ち止まり深呼吸を繰り返す。確かに顔色が悪い。
「まだ時間あるから大丈夫。落ち着いてから入ろう。」声をかけて様子を見た。
そのうち、同じ中学から来た友人たちが集まってきた。幸い、何人か同じクラスになったようだ。話をしているうちに気が紛れたのか、しばらくしてから校内に入った。
式やホームルームは、まあなんとか無事にやり過ごしたようだった。
次の日、朝は自分で起きてきたけれど顔色が悪い。でも本人は黙々と学校の準備をしているし何も言ってこないので、とりあえず様子を見て送り出した。
そして今日。前日よりも顔色が悪い。様子を伺いながら、私も仕事に行くため一緒に家を出た。
「吐き気する…」と立ち止まり「抗がん剤やめても、大して体調変わんない気がする。」と息子。
「朝は自分で起きれるようになったよね。」と私。
「…緊張から来てるんだよね、この吐き気。」息子は言った。
「学校には病気のことや朝の体調が悪いことは説明してあるよ。保健室の先生にも話してあるし、遅刻しても大丈夫なんだよ。」
私が言うと、息子はうなづいて歩いて行った。今日は初めての実力テストなので、絶対に遅刻したり休みたくはないんだろう。吐き気が緊張からきていると自覚して口に出せたのは、一つ成長できたところかもしれない。
どうか吐き気が治まりますように、と祈った。これ以上つらい思いをしないで済みますように。どうか高校生活が順調にいきますように。
いつものことだけれど、親は無力だなあ…。