大学病院に行った。
診察を受けながら「体調どお?」とドクターに聞かれた。息子は「最近はあんまり…よくないです。」と答えた。
朝食をとれないのはいつものことだが、最近は昼も夜も食欲がないし、朝起きられなくなってきていた。高校入学が近づいてきて緊張しているのかな。また登校できなくなったらどうしよう…私はもちろん、息子も不安になっていた様子。「大丈夫です」が口癖の息子、自分で「体調があまりよくない」と言うのは余程のことだ。
ドクターは胸の音を聴いては「う~ん」、喉を見ては「う~ん」、お腹を診察しながら「う~ん」、明らかにいつもと様子が違う。これ絶対、血液検査の結果に何かあったんだ。もしかして…再発の可能性?
いやいや、さっき「高校生活楽しみだねー」などと話していたから、たぶん違う。何だろう…。
頭の中で超高速に考えていたら、ドクターが検査結果の紙を見て話し出した。
「肝機能の数値が急激に上がっています。抗がん剤を投与できる基準を軽く超えてしまいました。」
もともと薬剤性の肝機能障害で内服していた。抗がん剤投与時にはよくあることと説明されていたし、数値は高いまま安定していた。
それが、3週間前に検査した時より倍以上も上がり、ガイドラインで決められた数値を超えてしまった。投薬中とはいえ、健康な男子の基準値の30倍近い。
「とりあえず2週間抗がん剤を中止しましょう。それで回復すると思うし、回復したら再開します。」
抗がん剤の中止はとても不安。でも肝臓の数値が急上昇なのも不安。本当にそれで回復すればいいけど、回復しなければどうなるんだろう…。息子は隣で黙ったままだ。
ドクターは息子に向き直って言った。
「今の体調不良は、前みたいに精神的な不安からくるものではないよ。休薬すれば体調はぐっと良くなるから心配しないで大丈夫。ちょうど高校生活が始まる時期に休薬になるから、いいスタートをきれるんじゃないかな。」
息子は安心したような声で「はい」と答えた。
隣にいたので、息子がどんな表情をしていたのかは分からない。ドクターの「精神的な不安からくるものではないよ」「大丈夫」という言葉で、息子がほっとした気配が伝わってきた。
しっかりと息子を安心させてくれたドクターには感謝しかない。
とりあえず休薬して2週間後に再検査。休薬中に体調が良くなってくれればいいなと思う。息子の肝臓、頑張ってくれ。