息子、クラブチームを辞めることにした。
保育園の頃からチームに所属している息子、JチームのU-18がどれほどハードなものかはよく分かっている。医学部に入るための勉強とクラブチームの活動は、自分には両立できないと判断したようだ。
事前に電話で退団することはお話しし、監督にご挨拶するため久しぶりにグラウンドへ行った。
「おお!息子、久しぶりだな!背が伸びたんじゃないか?体調はどうだ?」
監督は普段通り、気さくに声をかけてくれた。
息子は、長い入院生活の中で医師を目指したいと思ったこと、そのために勉強に力を入れたいから退団を決めたことを、自分の言葉で話した。
監督は頷きながら聞いてくれ、私たちの顔をみながら話し出した。
「こんなことを言うと一番悔しいのは息子くんだろうけれど…試合中コーチと二人で『こんな時に息子がいてくれたらなあ』と話す場面が何度もあったよ。」
「うちのチームのボランチは、やっぱり息子だったな。」
「私たちは何もしてあげられなくて…申し訳ない。」
監督の目には涙が浮かんでいた。
あの頃、上手な子が揃い、他のチームからも上を目指して移籍してくる子がいる中で、息子は苦戦していた。悔しい思いをたくさんする中で自分のプレーを掴みはじめ、ようやくレギュラーに定着してきた矢先に病気でチームを離れた。
自分だけが置いていかれるように感じていただろう。でも、戻ってきて欲しい、君がいてくれたらなあ、と監督が言ってくれたことは、これからの息子にとって大きな力になるような気がした。
高校の部活でサッカーを続けるつもりだと話すと監督は
「いきなり部活できついようなら、うちのU-15の練習に顔出してもいいぞ。少しずつ体慣らしすればいい。」
「小学生たちの練習を手伝いながら動いてみたらどうだ。」
などと言ってくれた。
そして、息子の顔をしっかり見て言った。
「どんな形でもいいから、いつでもチームに帰っておいで。医師になってチームドクターになるのもいいなあ。子どもができたら下部組織に入れてくれてもいい。縁はずっと続いているよ。」
息子、いいチームといい監督に恵まれて幸せだったね。一区切りつけて、ここからまた前に進んでいこう。