フランスで首相が交代 | 舛添要一オフィシャルブログ Powered by Ameba

舛添要一オフィシャルブログ Powered by Ameba

舛添要一オフィシャルブログ Powered by Ameba

 1月8日、フランスのエリザベッド・ボルヌ首相が辞任した。後任はガブリエル・アタル国民教育相(34)で、第5共和制で最年少の首相で、同性愛者である。

  マクロン大統領は、多くの難題の解決のために政権運営に苦労してきた。今年はヨーロッパ議会選挙やパリ五輪が行われるため、政権の立て直しを図る決意で内閣改造を行ったのである。

 昨年3月には、年金の受給開始年齢を62歳から64歳に引き上げる法案を巡って、抗議デモがフランス全土で激化した。

 日本では定年退職後も働きたい人が多いが、フランスは逆で一日も早く退職して年金生活に入りたいという人が多い。だから、その時期を2年も遅らせるということに猛反発したのである。国の財政という観点からは、政府の改革案は妥当なのだが、フランス的生活様式に固執する国民は多い。

 12月には、不法移民の規制を強化する法案が成立した。フランスでは、移民は労働力として不可欠であるが、犯罪やテロの発生源となっている面もある。そのため、移民排斥運動が起こり、極右の「国民連合(RN)」が勢力を伸ばしている。移民排斥をうたう極右の伸張は、他のヨーロッパ諸国でも同じである。

 そこで、マクロン政権は、犯罪を犯した外国人を迅速に国外追放できるようにするなどの規制強化法案を提出したのである。この法案は、移民に寛容な左派からも、規制が生ぬるいとする右派からも批判されたが、採決では、極右の「国民連合」が一転した賛成に回ったために成立した。

 このような政治状況のために、マクロン大統領の求心力が低下したのである。

 若いアタル新首相の下で、マクロン政権のイメージはアップするのか。アタルは、私もフランス留学中にお世話になったパリの名門校「政治学院(Sciences Po)」の出身のエリートである。父親はユダヤ人で、反ユダヤ主義者や同性愛嫌悪者からいじめられた体験がある。

 そこで、アタルは国民教育大臣として、学校でのいじめを撲滅したり、一部のイスラム教徒の女性が着用して全身を覆う「アバヤ」を学校では禁止したりして、国民の人気を博した。政治家の中で、人気はナンバーワンである。そこで、マクロンが抜擢したのである。ただ、同性愛者という点では、保守層の中には反発する有権者も出てこよう。

 首相官邸での首相交代セレモニーでのアタルの演説をテレビ中継で聴いたが、自信に満ちた決意を表明し、好感の持てるものであった。直後の支持率は53%であった。その勢いを維持して、困難な改革を実行できるのかどうか、注視したい。