進行するヨーロッパの右傾化 | 舛添要一オフィシャルブログ Powered by Ameba

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  7月23日に行われたスペインの総選挙では、中道右派政党の国民党(PP)が、ペドロ・サンチェス首相が率いる中道左派政党の社会労働党(PSOE)から第一党の座を奪った。その他、ヨーロッパ諸国では、極右政党の伸長など政治の右傾化が進んでいる。その背景にあるものは何か。

 スペインでは、2018年6月、PPのラホイ首相が不信任され、国会で多数の票を得てPSOEのサンチェスが首相になった。その後、2019年4月の総選挙でPSOEは票を伸ばしたが、過半数に届かず、左派ポピュリスト政党のポデモス(PODEMOS)と連立政権を組んだ。

 しかし、この連立政権は少数与党であり、政権運営のために、カタルーニャやバスクの独立を掲げる地域主義政党とも協力した。たとえば、服役中のカタルーニャ独立運動の幹部を恩赦したが、この措置は多くの国民の反発を買った。

 サンチェス政権は左派リベラルの政策を展開し、女性やLGBTの権利保護を推進したり、イタリアが入港を拒否したアフリカや中東からの移民船を受け入れたりした。これらの政策も、保守層の批判を招き、とくに極右のVOX(「声」を意味する)は、猛反発している。

 総選挙の結果、下院350議席のうち、PPは136議席(47議席増)、PSOEは122議席(2議席増)を獲得した。しかし、VOXは改選前から19議席減の33議席にとどまった。そのため、PPはVOXと連立を組んでも過半数に達しない。したがって、右派連立政権はできず、左派連立政権となる可能性もある。

 これから、連立政権交渉が始まるが、どのような組み合わせの政権となるかは分からない。政権の発足は9月になる予定であるが、再選挙の可能性もある。

 イタリアは、アフリカや中東からの移民船が最初に着く国であり、移民や難民の受け入れは大きな負担となってきた。地理的な事情からであれ、イタリアが大きな財政負担を強いられることに対する不満が国民の間で募り、それがネオファシストのジョルジャ・メローニ政権の誕生(2022年10月)につながった。

 彼女が率いる政党「イタリアの同胞(FdI)」の政策は、VOXの主張に相似しており、LGBTの権利拡大反対、移民排斥、反イスラムなどが特色である。

 ドイツでは、ショルツ首相のSPD(社会民主党)が不人気で、移民排斥をうたう極右政党の「ドイツのための選択肢(AfD)」が勢力を伸ばしている。独紙「ビルト」の最新の世論調査では、政党支持率はCDU(キリスト教民主党)がトップで26%、2位がAfDで22%、SPDは後塵を拝して18%であった。SPDと連立を組む緑の党が14%、FDP(自由民主党)が7%であった。

 SPD、緑の党、FDPの3与党を合計しても39%にしかならない。これは危機的な数字である。70%が政府の仕事に不満、60%がシュルツの首相としての仕事を評価しないとした。

 フランスでは、移民2世が検問中の警察官による発砲で死亡する事件が、全土に暴動を呼んだ。放火や商店の略奪などの行き過ぎが多発し、善良なフランス人の反発を買っており、それは移民排斥のムードを高めている。この動きに乗って、マリーヌ・ルペンが率いる移民排斥をうたう極右政党RN(国民連合)が勢いを増している。

 ヨーロッパの右傾化の波に収まる気配はない。