ウクライナ戦争後の世界秩序はどうなるのか? | 舛添要一オフィシャルブログ Powered by Ameba

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 ウクライナ軍は反転攻勢に出た。ロシア軍は苦戦を強いられているが、核兵器を保有する軍事大国であり、容易には屈服はしまい。

 また、広大な領土には石油、天然ガス、食料などが豊富にある。対露経済制裁に参加している国は、世界200カ国の5分の1にすぎず、ロシアは、グルーバルサウスなどとの貿易によって、制裁から逃れている。

 ウクライナ戦争がどういう形で終わるかは予想できない。ゼレンスキー政権は、クリミアの奪還まで戦い続けると主張し、アメリカはその主張に沿った武器支援を展開している。同盟国がアメリカ製のF16戦闘機を供与することを承認し、ウクライナ兵に操縦の訓練を施す。

 ロシアは、クリミアと東部の既存の支配地域を死守する方針である。つまり、両国の方針は妥協を排するものである。

 戦争は長期化するというのが一般的な見方であるが、いくつかのシナリオは描くことができよう。

 第一はロシア勝利のシナリオであるが、これはウクライナへの西側の武器支援が続くかぎりは想定しにくい。しかし、プーチンが戦術核を使用する可能性は完全には排除されない。核戦争を回避するために、西側がウクライナに妥協を強いて停戦に到達することはありえよう。

 第二はウクライナ勝利のシナリオである。西側の最新鋭の戦車や戦闘機が供与されれば、ロシア軍に対して大きな成果を上げることができるが、降伏にまで持ち込むのは至難の業である。

 第二次世界大戦中の独ソ戦を見ても分かるように、ロシア人は極寒の中でも粘り強く戦う。クリミアや東部を奪還されることは許容しないであろう。

 そう考えると、戦局は膠着し、朝鮮戦争のような状態になる。その際に、誰が停戦へのイニシアチブを取れるのであろうか。

 ロシア以上の大国はアメリカと中国である。この2カ国が動くしかないが、両国は今や世界で覇権を争っている。ウクライナ戦争後には、ロシアの国力と権威は減退する。アメリカもウクライナ支援で巨額の財政支出を強いられている。ところが、中国は、ウクライナ戦争で安価な原材料をロシアから購入するなど、漁夫の利を得ており、経済を発展させ、軍事力を拡大し、さらなる大国化を進めている。人民元も国際決済手段としての役割を増大させている。

 そのように考えると、どのような形で戦争が終わるにせよ、中国の国力は伸びる。習近平は、中華人民共和国建国100年目の2049年には世界一の大国となることを最大の政策目標にしている。

 最大のライバルはアメリカである。中国は着実にアメリカに追いつき、追い越そうとしている。しかも、世界では民主主義陣営よりも権威主義陣営に属する国のほうが多くなっている。民主主義が勝利するとは断言できない状況である。

 訪中したブリンケン国務長官は、6月19日、習近平主席とも会談した。しかし、それだけで米中関係が好転するわけではない。世界は、「アメリカの天下(パックス・アメリカーナ)」から「中国の天下(パックス・シニカ)」に移行するかもしれない。

そうなると、わが日本はアメリカの支配圏から中国の支配圏に移行せざるをえなくなる可能性もある。低迷が続く日本は、今こそ成長への改革を断行しなければ、これからの世界で生き残れないであろう。