新しい日韓関係への展望:尹錫悦大統領訪日 | 舛添要一オフィシャルブログ Powered by Ameba

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 3月16日、韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領が来日し、岸田首相と首脳会談を行った。日韓関係改善の第一歩として歓迎したい。文在寅政権下で余りにも悪化した関係を大きく変えるきっかけとなることを期待する。

 日韓関係のトゲとなっているのが「元徴用工(旧朝鮮半島出身労働者)」訴訟問題である。 しかし、日本政府は、1965年の国交正常化に伴い締結された日韓請求権協定で、全ての賠償問題は解決済みという方針を堅持している。

 太平洋戦争は日本の敗戦で終わり、朝鮮半島は独立した。1965年6月には、日韓基本条約が結ばれ、両国間の請求権の完全かつ最終的な解決が図られた。日本側は、経済協力金として、無償3億ドル、有償2億ドル、民間借款3億ドル以上を供与・融資を行い、韓国側は対日請求権を放棄した。

 日本政府は、無償の3億ドルは、徴用工などの個人からの請求への支払いに使うべきだと主張した。韓国政府は、ごく一部はそれを実行したものの、3億ドルの95%は経済発展に使ったのである。それは、貧しい韓国が経済的に「離陸」することを優先したからである。

 1965年の基本条約によって、損害を被った個人の請求権が消滅するものではなく、それは参議院予算委員会における外務省局長答弁でも「存在し得るものである」と明言されている(1991年8月27日)。ただ、その請求権には、日本政府ではなく韓国政府が対応すべきだという取り決めなのである。したがって、そもそも個人の請求権は消滅したのではなく、その請求先が日本政府ではなく、韓国政府だということなのである。

 しかも、徴用工訴訟は日本政府ではなく、日本企業を相手取っているので、その訴訟が無効だというわけにはいかない。2012年5月23日に、韓国の大法院は、三菱重工と新日鉄に対する損害賠償請求を認める判断をした。これ以降、韓国各地の地方裁判所で、同様な趣旨の判決が続いていたが、2018年10月30日には、大法院は、新日鉄(現日本製鉄)に対し、原告4人に1人当たり1億ウォン(約920万円)の支払いを命じている。

 しかし、被告とされた日本製鉄や三菱重工業は賠償をしていない。

 尹錫悦政権は、解決策として、韓国の財団が賠償を肩代わりする案を提示した。韓国民法の「第三者弁済」を適用するもので、第三者である財団が弁済することになる。ただ、韓国民法では、債務者の意思に反して第三者弁済は行うことができない。そこで、債務者の日本企業が黙示的に同意したとみなすという解釈を採用する。こうすれば、日本企業も大法院判決を受け入れたことにはならない。つまり、日本側の立場も配慮した内容となっているのである。

 この提案と対をなす形で、韓国政府は、日本側の謝罪や日本企業による財団への自発的な寄付を求めている。

 日韓の財界が協力して、若い世代のための「未来青年基金」を創設し、留学生への奨学金の支給などを行うことを決めた。韓国のK-popや日本のアニメへの関心を見ても、両国の若い世代間の相互交流には期待が持てる。

 さらに、日本政府は、2019年に厳しくした韓国に対する輸出管理措置を緩和する。具体的には、半導体素材の輸出規制を解除し、輸出手続きで優遇するホワイト国(グループA)に韓国を戻すことにした。

日韓関係の改善を期待する。