「底なし沼」の東京五輪汚職:「安倍一強体制」に似た「電通一強体制」の闇、イベント業界に牛耳られる | 舛添要一オフィシャルブログ Powered by Ameba

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  東京オリンピック・パラリンピックの運営に絡んで、東京地検特捜部は、入札談合疑惑で大会組織委員会の元次長や電通など関連企業の幹部を逮捕した。贈収賄事件に続く不祥事である。

 昨年夏以来、東京地検特捜部は、贈収賄事件で組織委員会の高橋治之元理事やKADOKAWAの角川歴彦会長らを逮捕してきた。

この汚職も今回の入札談合も、私が2016年6月に都知事の職を辞してからの話であるが、「Tokyo 2020」大会の準備に奔走した者としては極めて残念である。

 仮に私が都知事であり続けていたら、このような不祥事を阻止できたか否かも分からない。組織委の運営実態について情報を遮断されてしまえば、いくら「親会社」(東京都)の社長(知事)だとはいえ、子会社(組織委員会)に介入することもできなかったであろう。

率直な感想を言えば、私が都知事であっても、検察が捜査している二つの事件の発生を食い止めることはできなかったであろう。それは、政界のみならず、スポーツ業界、広告・イベント業界に構造的な問題があるからである。

 五輪では本番の前にテスト大会を行うことになっているが、IOCからその準備を急ぐように求められた組織委員会は、森次長が中心になって、電通などと協力して応札予定企業の受注意向を一覧表にまとめた。

 その計画立案業務の競争入札は、2018年5〜8月に26件実施している。落札総額は5億円4千万円であるが、入札に参加したのは、半数以上の件で1社のみであった。上記の会社を含む9社1団体が参加したが、一覧表通りの受注だったという。組織委員会と広告代理店業界が、落札企業を予め決めていたのである。

 テスト大会は一般競争入札であったが、それは本大会での実施運営を請け負うことを前提に組み立てられており、「テスト大会→本大会」という流れが、「競争入札→随意契約」という流れと並行していた。

 公開の競争入札では、談合はもちろん独占禁止法違反である。しかし、それを敢えて行って、その調整を踏襲して、総額約400億円の本大会運営業務を随意契約という形で分配するという「美味しい話」になっていたのである。

 実際に、随意契約が行われた約40の会場の運営について、組織委員会は本大会の会場運営費を当初は約149億円と見積もっていた。ところが、最終的には161億円に跳ね上がっている。会場運営費のほかに、「競技運営費」約99億円などがあるが、組織の清算法人は随意契約の受注額の詳細を公開していない。

 約400億円になるというのは、関係者からの情報である。全ては、検察の捜査に待たねばならない。公益性のある東京オリンピック・パラリンピックについて、組織委員会が何の監査も受けず、経理についての情報を公開しない体制になっているのは大きな欠陥である。そして、それが法律違反の談合を生む背景になっている。

 公開入札でなく、競争原理がきかない随意契約であるため、受注企業の儲けが増えるのであり、それは最終的には国民の税金で賄われるのである。森元次長は、テスト大会運営も随意契約で行うつもりであったが、さすがに世間の批判を恐れて競争入札にしたという。テスト大会と本大会を一体のものと考えていたことは間違いない。

 私は、都知事時代に、埼玉県や千葉県の既存の施設に競技会場を移すなどの工夫をして、競技場建設費用など約2000億円の削減に成功した。しかし、私が辞任した後に、このような水増し発注が行われ、経費が上積みされたとすれば、遺憾である。