植田和男新総裁は、日銀の金融政策を転換させるか? | 舛添要一オフィシャルブログ Powered by Ameba

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 4月8日で任期満了となる日本銀行の黒田東彦総裁の後任として、岸田首相は経済学者で元日銀審議委員の植田和男を充てることにした。これまでは、日銀か財務省の出身者が占めてきたが、学者が登用されるのは戦後初めてのことである。それだけに、内外で驚きの声が上がっている。

 副総裁には、氷見野良三前金融庁長官と内田真一日銀理事を任命する方針である。前者は国際経験が豊富で、後者は日銀の実務に精通している。このトリオのバランスと役割分担はよく考えられており、金融政策の急激な変化もなければ、逆に硬直的な政策運営もないと予想され、安心できる布陣のようである。

  2月24日の衆議院議会運営員会で、植田氏は所信表明を行い、「日本銀行が現在行っている金融政策は適切だ」と述べ、「さまざまな副作用を生じている」ものの「2%の物価安定の目標にとって必要かつ適切な手法だ」という述べた。
 私は国会議員時代に、デフレからの脱却を実現すべく、国会で当時の速水優日銀総裁と対決し、2000年8月のゼロ金利解除は「世紀の大失策だ」と批判した(2001年11月14日の参議院予算委員会)。

 植田氏は、1988年4月に日銀審議委員に任命され、再任を経て、2005年4月までその任にあったが、私が批判したゼロ金利解除には、「デフレ懸念が再発するリスクがある」として反対している。その点では、私と立ち位置が同じであった。

 私は、同じ予算委員会で速水総裁に対して、次のように、インフレターゲットの導入を求めた。

 しかし、この私の求めを速水総裁は拒否した。このインフレターゲットの導入については、植田は、「物価上昇に歯止めがかからなくなる恐れがある」として慎重な姿勢を貫いた。そこは、私と意見が異なっていた。

 2012年末に政権に復帰した自民党の安倍首相は、2013年から2%の物価目標を掲げて大規模な金融緩和政策を継続し、今日に至っている。私は、インフレターゲットの導入が10年遅れたと考えており、それがデフレからの脱却を遅らせたという認識である。

 ウクライナ戦争で諸物価が高騰し、アメリカをはじめ先進諸国はインフレを抑制するために金利を上げた。そのため内外金利差が拡大し、円安が進行し、輸入物価の高騰で、日本もまた物価上昇に見舞われている。そこで金融緩和政策を見直すべきだという声が高まっている。

 新総裁が、どのような金融政策を展開するのかを注視したいが、金融政策だけで活力を失った今の日本を立て直すことは不可能である。賃金と物価の好循環を実現するためには、賃金増が不可欠である。それは日銀の仕事ではないが、政府と協調して政策立案すべきである。

 日銀法第4条には、「日本銀行は、その行う通貨及び金融の調節が経済政策の一環をなすものであることを踏まえ、それが政府の経済政策の基本方針と整合的なものとなるよう、常に政府と連絡を密にし、十分な意思疎通を図らなければならない」と明記してある。

 さらに付け加えれば、官も民も生産性を上げる努力が必要である。25年もデフレが続き、賃金が上昇しない背景には生産性の低下があることを強調しておきたい。