ウクライナ戦争・・迫られるエネルギー政策の見直し | 舛添要一オフィシャルブログ Powered by Ameba

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 ウクライナ戦争の長期化に伴い、世界のエネルギー事情が悪化している。とくにヨーロッパ諸国は、石油、石炭、天然ガスをロシアに大きく依存しているので、打撃は大きい。

 たとえば、ドイツの電源構成は、石炭が30.0%、石油が0.8%、天然ガスが15.3%である。そして、その天然ガスの55%、石油の42%をロシアから輸入している。

 EU全体では、天然ガスの45%、石油の27%がロシア産である。ヨーロッパがロシア産の石油や天然ガスを全面禁輸できないのは当然である。

 ドイツは、8月12日、エネルギー節約のため、公共の建物の暖房温度の上限は19℃とすることを決めた。また、稼働中の原発3基を今年中に停止して脱原発を達成する計画であったが、その見直しも議論されている。さらには、2030年までに全廃する予定だった石炭火力発電所も、2024年3月までは使えるようにしたのである。

 日本も参加する東アジアの天然ガス事業「サハリン2」については、プーチン大統領は新たな会社を作ったが、日本はそこに資本参加する。サハリン2からの天然ガスは、日本のLNG輸入量の8.9%を占めており、この供給停止は、日本にとって大きな痛手になるからである。

 西側先進国は、地球温暖化や環境問題への対策として再生エネルギーを推進してきたが、太陽光や風力は安定供給という点で問題がある。

 また、価格の面でも、再生エネルギーは安価ではない。日本政府は、2012年に固定価格買取制度(FIT)を導入し、太陽光発電を対象に買い取っている。その賦課金は年間に一家庭に平均して1万円以上がかかっているのである。

 しかも、太陽光発電は、パネルの取り付けのみならず、老朽化したパネルの除去にも大きなコストがかかり、大量な廃棄物の発生という問題でもある。

 さらに、そのパネルは中国から輸入しているのである。太陽光発電用結晶シリコンの世界における中国のシェアは8割であり、しかもその半分以上は新疆ウイグル自治区で生産されている。アメリカは、人権問題を理由でにすでに禁輸措置を実行している。

 ロシアのウクライナ侵攻は、これまでのような再生エネルギー至上主義ではなく、安定供給や価格も考慮したエネルギー政策を立案すべきことを再認識させている。

 岸田首相は、原発の再稼働を促進することを決めた。脱炭素のみでは、今のエネルギー問題には対応できないことは明白である。地球温暖化に対応するため、長期的には脱炭素という目標を掲げることは間違いではないが、目の前にあるエネルギー危機に対して必要な措置を採ることは責任ある政治家の仕事である。原発再稼働・新設に向けた岸田首相の責任は重い。