ロシアと中国はアメリカ主導の国際秩序にどう対応するのか? | 舛添要一オフィシャルブログ Powered by Ameba

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 ウクライナ侵略に対抗するため。西側諸国はロシアに経済制裁を課している。

 これに対して、中国は、経済制裁には反対し、ロシアの安全保障上の懸念には理解を示している。共同してアメリカからの圧力に対応せねばならないからである。

 中国とロシアの経済関係は緊密であり、中国の貿易相手国については、ロシアは輸出額で13位、輸入額では11位である(2021年)。そして、ロシアの原油輸出相手国の1位は中国(全体の22%)であり、また中国の原油輸入相手国のトップはロシア(全体の14.6%)である(いずれも2017年)。

 その関連で、ロシアや中国が中心となって進める経済協力体の今後の展開が気に掛かる。

 ユーラシア経済連合(EEU、EAEU)とは、2015年に発足した地域経済協同体で、ベラルーシ、カザフスタン、ロシア、アルメニア、キルギスが加盟国である。EUに対抗する経済協力体樹立を狙ったプーチンの構想だが、ウクライナはEAEUにはそっぽを向き、EUに接近した。ウクライナを何としてもEAEUに加盟させたかったプーチンを裏切ったことが、今回のウクライナ侵攻の背景の1つである。

 因みに、中国とウクライナは良好な関係にあり、ウクライナは習近平の「一帯一路」構想に参加している。また、ウクライナの最大の貿易相手国は、ロシアを抜いて中国である。その点でも、中国がロシアとウクライナの仲介役を務めることは理に適っている。

 ところで、注目に値するのは、上海協力機構(SCO)である。これは、中国、ロシア、カザフスタン、キルギス、タジキスタン、ウズベキスタン、インド、パキスタン、イランの9カ国で構成される安全保障、経済、文化の協力システムである。

 中国とロシアは、1991年のソ連邦の解体に伴って不安定になった中央アジアを管理する意向があり、また中露経済関係を強化する必要を感じていた。1996年4月に中国、ロシア、カザフスタン、キルギス、タジキスタンの5カ国が集まった上海での会合が出発点で、2001年にウズベキスタンを加えてSCOが正式に発足した。2015年にインドとパキスタンが加わり、またモンゴル、イラン、ベラルーシ、アフガニスタンが準加盟国(オブザーバー)となった。2021年にはイランが正式加盟国となった。

 さらに、スリランカ、トルコ、アゼルバイジャン、アルメニア、カンボジア、ネパールが対話パートナーとなっており、その他、多くの国が加盟の意向を示している。

 SCOは、プーチンの構想であるEAEUと習近平の描く「一帯一路」を共に実現させるための有力な国際協力システムとなりうるものである。しかし、西側の発案であるEUやNATOには、実際の機能も国際的影響力も及ばない。今後、どのような形で発展していくかは不明であるが、イスラム教国を数多く含んでいることに、テロとの戦いなどで重要な意味を持ちうる。

 米ソ冷戦の終焉で、資本主義と社会主義の対決図式には勝負がついたが、キリスト教とイスラム挙の「宗教戦争」は鎮静化していない。その点からも、SCOの存在は無視できないであろう。

 ウクライナ戦争がどういう結末になるにしろ、ロシアの地位は相対的低下し、アメリカと中国が世界の覇権をめぐって争う時代になる。