中国のアキレス腱・・少子化 | 舛添要一オフィシャルブログ Powered by Ameba

舛添要一オフィシャルブログ Powered by Ameba

舛添要一オフィシャルブログ Powered by Ameba

 アメリカが覇権国として世界を支配する体制、つまりパックス・アメリカーナは今なお健在である。一方、東西冷戦の敗者、ソ連邦は解体され、プーチン大統領の指揮の下、ロシアは再興への道を歩んでいるが、その道のりは、長くて厳しい。核兵器を保有する軍事大国であるが、経済力などアメリカに伍するだけの力は持っていない。

 今や、中国がアメリカの対抗勢力として浮上している。中国は、1978年12月、鄧小平の指導によって「改革開放」政策が決められ、市場経済原則を採り入れて、目覚ましい経済発展を遂げてきた。GDPで日本を追い抜いて、アメリカに次ぐ世界第2位の地位にまで来ている。軍事力の増強にも余念がない。AIやG5など、先端技術でも競争力を強化している。

 そのような中で、中国では、人口減少への対応が大きな争点となっている。

 中国共産党は、5月31日の政治局会議で、1組の夫婦に3人目の出産を認めることにした。

 1979年以降、中国は人口抑制策として「一人っ子政策」を実施してきたが、少子高齢化が進み、一人の子どもが両親と祖父母の老後の面倒を見るという苛酷な状況が生まれた。

 中国政府は、「一人っ子」を緩和し、2016年に「二人っ子政策」に政策転換したが、その後も、少子高齢化に歯止めがかかっていない。2019年の合計特殊出生率は、日本が1.36、中国が1.30である。

 そこで、今回の「三人っ子政策」に変更したのである。

 中国では、夫婦共稼ぎが普通であるが、大都市に住む若いカップルにとって生活費、とくにマンション価格の高騰は深刻な問題になっている。

 また、子育て、とくに教育に費用がかかりすぎ、2人目の子どもを持つのは無理になっている。お金がなくて結婚を断念する中国人男性が増えている。

 人口が減少したのでは、世界の大国として影響力を行使できなくなる。人口世界一の座は、インドに奪われそうである。

私は、中国の大学で講義をしたり、市民を相手に講演する機会が多いが、日本の元厚労大臣として、少子高齢化にどう対応すべきか、介護保険制度の全国的導入は可能かといった課題についてよく質問される。アメリカとの競争よりも、身の回りの社会保障制度のほうが遙かに切実だからである。

 先のコーンウォール先進国サミットでは、中国包囲網が形成されたが、少子高齢化問題は、民主主義か専制主義かという政治体制の違いを超えて、日本や中国が直面する問題であり、この分野での日本の経験を中国に伝えるのは大いに意義がある。中国の利益にもなるし、日本にとっても対中関係をこれ以上悪化させないための材料にもなる。

 経済的関係のみならず、このように両国が共通して直面する課題について、協力しあうことは、安全保障面で高まっている緊張を緩和させるのにも役立つ。

 中国への対応は複眼的であるべきだ。