なぜ日本はワクチン開発に遅れをとったのか | 舛添要一オフィシャルブログ Powered by Ameba

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 4月15日の新型コロナウイルスの感染者は、東京都が729人、大阪府が1208人、兵庫県が493人と、全国的に拡大している。蔓延防止等重点措置では足りず、状況は緊急事態宣言を発令するくらいに深刻になっている。

 このような状況を好転させる切り札がワクチンであるが、日本では、接種完了者は人口の1%と進んでおらず、G7の中で最悪である。

 高齢者は4月12日から接種を始めるというが、すべての高齢者が2回の接種を完了するのは7月以降になるのではないか。

 イスラエルやチリの例もあるが、接種が進んでいるのは、英米などワクチン開発の先進国であり、それは国産ワクチンを潤沢に確保できるからである。

 今回のワクチン開発が異常なスピードで成功したのは、新技術のおかげである。ファイザーやモデルナは、メッセンジャーRNAを活用してウイルスの遺伝子情報を使い、病原体タンパクを人工的に大量生産する手法を開発した。

 なぜ、日本で開発が遅れているのか。

 第一に研究開発予算も研究者も不足していることである。ワクチン開発には安全性が確保された実験室が必要だが、最高レベルの安全性が確保されているP4レベルは国立感染症研究所にしかない。これまた、感染研の独占状態で既得権益の上にあぐらをかいている。少なくとも、P4レベルの研究室が3つは必要である。

 研究者の数も約300人であり、アメリカCDCの50分の1である。また、予算もアメリカの10分1である。これでは、全く話にならない。そこで、2020年度予算の第一次補正で100億円、第二次補正で1400億円、第三次予算で1200億円が計上されているが、合計しても2700億円である。長期的視点に立って、国家の安全保障政策の一環としての予算措置が必要である。

 第二に、日本のみでは十分な治験ができないことが問題である。ワクチンや新薬の開発で、国内治験数が足りないので、インドやブラジルなど海外と国際協力を進め、治験の数を確保せねばならない。海外での治験も法的には可能となっている。

 第三は、副反応による事故の場合の対応、免責体制を整備することである。これまでワクチン接種などの副反応で、厚労省の担当課長が刑事訴追されるケースがあり、厚労省もワクチンの承認に過剰に慎重になっている。今回のコロナの場合、ワクチンを製造するメーカーは免責とされるが、官僚についてはそうなっていない。これも重要な検討課題である。

 第四に、ファイザー、モデルナ、アストラゼネカ社以外でも、有効なワクチンは輸入して、接種のスピードを上げねばならない。ジョンソン&ジョンソンのワクチンは一回の接種で済む。ワクチンの専門家によれば、中国のワクチンも十分に安全で効果があるそうだ。ドイツはロシアのスプートニクVを購入することを決めている。

 日本も、イスラエルやチリのように外交努力を展開して、ワクチン確保を進めねばならない。

 ワクチンの開発も駄目、調達も駄目ならば、政府としての役目を果たしていないと言われても仕方がない。