「医療崩壊」という現実 | 舛添要一オフィシャルブログ Powered by Ameba

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 2月2日、菅首相は緊急事態宣言を、栃木県を除く10都府県で3月7日まで延長することを決めた。感染者数は減少してきたが、病床使用率などが高止まりしているからである。

 つまり、緊急事態宣言を加除できないのは医療資源の逼迫が大きな原因である。つまり、事態を深刻にしているのは、医療崩壊と言われる現状なのである。

 感染再拡大に伴って、重症化する患者が増え、病床にゆとりがないため入院できずに自宅で療養をせざるをえない患者が増えている。東京都だけでも、自宅療養中に死亡する人も増えている。

 人口1000人当たりの病床数は、日本13.0、韓国12.4、ドイツ8.0、フランス5.9、イタリア3.1,アメリカ2.9、イギリス2.5と、先進国の中でも多く、しかも欧米に比べて感染者数の少ない日本で、なぜ医療崩壊が起こるのか。

 人口1000人当たりの医師数で見ても、日本2.5、ドイツ4.3、イタリア4.0、フランス3.4、イギリス3.0、アメリカ2.6、韓国2.4と、欧米に比べてさほど遜色はない。

 問題は、医療資源の偏在であり、コロナ危機に対応できるような適切な配置ができていないことである。そこで、コロナ感染症治療に当たる医療スタッフも病床も不足することになる。

 東京について言えば、大学病院や専門病院は多いが、数日間の入院が必要な胃腸炎、ぜんそく発作などの患者を受け入れる中小病院が少ない。前者では病床は過剰で、後者は不足している。

 東京の病院の89.1%は民間病院であり、病床数の77.8%が民間である。つまり、民間病院にもコロナ治療に参加してもらわないと、病床不足が生じるのは当たり前である。

 政府は、一病床あたり450万円を加算して、コロナ重症者用病床に1950万円、一般病床に900万円を補助するが、期待するほど病床は増えない。もし、ある病院でコロナの集団感染が起これば、病院閉鎖などで赤字になってしまうし、風評被害で将来的にも患者が減りかねないのである。

 さらに、医療機関のどうしの連携も上手く行っていない。コロナ重症者が危機を脱したときに転院できる病院、また中・軽症者を受け入れる病院がもっと増えれば、今のような医療崩壊を心配する必要はなくなる。行政と各地域の医師会との協力が不可欠となる。

 これらは、昨年春の最初の緊急事態宣言が終わった後に、すぐに実行しておくべきだったのである。

 感染症法や特措法の改正も同じで、今頃になって付け焼き刃的に対応し、様々な問題を噴出させている。政府も国会ももっとしっかりしてほしいものである。