バイデンはアメリカと世界をどう変えるか | 舛添要一オフィシャルブログ Powered by Ameba

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  アメリカの新大統領バイデンは、就任後、大統領令を次々と発して、トランプ政権の政策を大きく変えようとしている。世界はどうなるのか。

 1月20日の大統領就任演説で、バイデンは「国際協調」と「国民の結束」をアメリカ国民に呼びかけた。

 国際協調については、、バイデンは直ちにパリ協定への復帰、WHO脱退の撤回を命じる大統領令に署名した。ジョンズホプキンス大学などの研究によると、地球温暖化が新たな病原体を生み、10年に一度は感染症が発生することにつながっている。

 そして、パンデミックに対応するためには国際協調が不可欠であり、WHOがその軸になっている。アメリカがWHOに戻ってくることは世界にとって望ましい。

 トランプはイランとの核合意からも離脱したが、バイデン政権はどのような形でこの合意に復帰するか検討しているものと思われる。

 イラン封じ込めとともに、トランプ政権下でイスラエルとアラブ首長国連邦の国交樹立など新たな動きも起こっており、その点でも新しい中東政策の立案には時間が必要であろう。

 アメリカ第一主義から同盟国重視への転換は日本やヨーロッパにとっても望ましい。しかし、アメリカ外交にとって最大の課題は中国である。バイデン政権になったからといって、米中間の緊張が緩和するわけではない。5Gなど先端技術をめぐる両国の緊張は続いていくであろう。また、香港の民主化弾圧などの人権侵害には厳しい態度をとっていくものと思われる。

 日米関係については、安倍晋三前首相とトランプ大統領の個人的信頼関係が良好な両国関係に役に立った。コロナ禍で、首脳会談もままならない中で、菅首相がどのようにして新大統領と緊密な関係を築いていくのか、今後の大きな課題となろう。

 トランプ政権の負の遺産を克服するためには、国民の宥和を図らねばならない。しかし、トランプが大統領選で7千万以上の票を獲得したことは事実であり、今なお多くの支持者がいる。アメリカは、人種、宗教、収入、教育、地域など様々な対立要因をかかえており、分断が深刻になっている。そして、それが民主主義を機能不全に陥れている。

 豊かな中間層の存在が民主主義の安定に不可欠であるが、今のアメリカでは、富める者と貧しい者との格差が開きすぎている。トランプ政権下で格差が拡大し、富裕層の上位1%の資産は35兆ドルに上るのに対し、全世帯の下位半分の資産は2.4兆ドルにすぎない。

 バイデンの民主党政権が、その格差を縮めることができるか。格差の問題は、世界中で共通の課題であり、コロナで傷ついた経済社会を立て直すためには、世界大恐慌の後にF.D.ルーズベルトが展開したようなニューディールが必要である。

 バイデン政権は、総額1.9兆ドル(約200兆円)の経済対策を講じ、高額所得者を除き1人1400ドルの現金支給、失業保険の特例加算増、最低賃金の引き上げなど、所得再配分政策を行う。その成果が上がれば、格差はわずかでも縮まる。ただ、それは、大きな財政赤字を生み出すことになる。

 トランプの扇動に乗って支持者たちが議会へ乱入した事件は、民主主義の統治能力に疑問を呈する不祥事であった。アメリカの民主主義モデルを再生させるの容易ではなかろう。