欧米で感染が再拡大する新型コロナウイルス:イデオロギーを科学に優先させるな | 舛添要一オフィシャルブログ Powered by Ameba

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 ヨーロッパやアメリカで、新型コロナウイルスの感染が再拡大している。当局は、外出禁止など感染防止策を強化して感染防止を図っているが、それに反発して、デモを繰り返す人々がいる。彼らは、マスクなど意図的に着用していない。

 欧米では、マスクが政治的シンボルになってしまっている。ネオナチなどの右翼の人々が反政府デモを繰り返しているが、そのような集会そのものが感染を拡大させている。感染症への対応は科学を基づいておこなうべきであり、政治的イデオロギーで左右されるべきではない。政治を科学に優先させたのが、ナチスであった。

 規制反対には、もちろん経済的な理由もある。感染が再拡大しているフランスでは、パリやマルセイユなどの大都市でバーやレストランの営業停止や営業時間の短縮などの措置が実施され、そのために困った経営者たちが不満の声をあげている。感染防止と経済とのバランスを上手くとるのは容易ではない。しかし、世界でコロナ感染者は約4千万人、死者は110万人を超え、終息にはほど遠い状況である。

 これまで、トランプ大統領以外にも、イギリスのジョンソン首相、ブラジルのボルソナロ大統領、ベラルーシのルカシェンコ大統領ら世界の指導者たちが感染しているが、彼らは最高の医療を受けられる立場にあり、彼らが治癒したからといって、普通の人々が「恐れるに足らず」というわけにはいかないのである。

 トランプ大統領やボルソナロ大統領のようなコロナ軽視の姿勢は褒められたものではない。リーダーとして「愚行」だと言ってよい。トランプ大統領が大統領選で苦戦しているのも、そのような態度を批判するアメリカ人が多いからである。

 大衆民主主義の時代、とくにポピュリズムの時代には、大衆の支持を得るために、科学に反することすら平気で詭弁で押し通す指導者が出てくる。右寄りの保守層に支持されているトランプ大統領は、マスク着用などの感染防止対策を講じないことを選挙戦略に使ってきた。その結果が、自らの感染、そしてホワイトハウスでのクラスター発生だったのである。

 スウェーデンは、独自のコロナ対策を行っているが、それは保健当局がきちんとした科学的理論に基づいて行っているのであり、いま多くの欧州諸国が感染再拡大に悩む中で、感染が減少する傾向にある。政治的イデオロギーに左右されず、集団免疫論も援用しながら、都市封鎖をしないほうがよいという結論に至ったのである。政府に対する国民の信頼が背景にあることも強調しておきたい。

 分断されたアメリカで、感染対策に熱心なミシガン州の民主党知事を誘拐する企てなどが起こっている。感染症対策は、あくまでも科学に基づいて行われるべきである。